SATRI-IC Ver3.0(V4.3)詳細 |
2002年3月にSATRI-IC Ver3.0が発売されました。SATRI-ICは、これまでに3種類製造されています。今回はその3回目のロットになります。左の写真の上からVer1.0、Ver2.0、Ver3.0です。回路自体はVer1.0から変更されていませんが、外観はロットごとにはっきり違っています。
Ver1.0は基板の外にパターンが出ないように設計されていますが、Ver2.0以降は積極的に基板の外側まで使ってデザインしています。今回のVer3.0では空きパターンの部分をメッシュのグランドパターンで覆い、外来ノイズにも強くなるよう改良されています。
もう1つ改良された点は、これまで使用していたチップ抵抗を今回から精度の高い金皮に変更したことです。回路が同じでもSATRI回路に使用している抵抗は回路動作の正確さに大きく影響しているらしく、音を聴いてみるとさらに良くわかります。特性的にも、下の表にあるように温度係数が約10倍違うことがわかります。
SATRIアンプでは、SATRI-ICは前段に使われていますが、前段で精度がアップするということは、後段の増幅にも良い影響を与えます。前段でのわずかな誤差が後段で増幅されるからです。
今回はモールドも変更されています。従来はプラスチックモールドでした。これは指で触っても柔らかい素材であることがわかりました。今回は固いエポキシモールドになっています。これで音が変わるかと言えば、変わると言えます。アンプ基板を丸ごとエポキシで固めると音質が向上しますが、これと同じことをICレベルで行っているからです。これら3種類のICを叩いてみると、Ver3.0のICはキンキンと固く締まった響きがします。
特性的にはわずかにノイズレベルが低くなっている他は大きく違うところはありません。ICのサイズもピン配置も同じです。SATRIアンプを持っていればそのまま交換して使えます。
試聴屋でICを交換して比較してみた限りでは、上記の改良の成果が良く出ていると感じました。交換したばかりの音は、低音がすっぱり切れてなくなったような音ですが、従来のSATRI-ICの音と比べると、無駄なぜい肉がないと言った印象です。一段と癖がなくなって透明感が出ています。1日通電するとだいぶ低音が戻ってきます。この低音は従来のSATRI-ICの低音よりも音の輪郭がきちんと出るようになっています。こちらの音に慣れると、従来のICの低音は緩いルーズな低音のように感じます。エージングが進んで来ると、高域の細かい音が良く出ていることがわかります。従来のICより音場が左右に広くなり音の分離も良くなっています。聴感上のレンジも少し広くなっていて、聴き慣れた曲が何か違う曲のように感じるものもあります。何度も聴いている曲でも、「あれ、こんな音が入っていたかな?」という新たな発見があるのにはちょっと驚きました。奥行き方向にも少し深くなっています。目を閉じて聴くとスピーカーの位置と関係なく音場が周囲に広がっているのがわかります。このような違いは、既にSATRIアンプを毎日使って良く知っている方にはすぐわかる変化と思いますが、直接比較するチャンスがない方は特に気にする必要はないでしょう。SATRIアンプは年ごとに進化していますが、初期のSATRIアンプからずっと聴いて来ている私も、次がどういう音になるのかいつも予想がつきません。この辺がSATRIアンプの面白さでもあり、次にどのようなものが出て来るかわからない楽しさがあります。
Ver3.0のICを搭載したSCA-7511でインターネットラジオを聴いてみます。SCA-7511は本格的なオーディオ用として使えるだけの充分なクオリティがありますが、同時に小型で持ち運びが簡単なため、ちょっと贅沢ですが、パソコンのサウンドモニターとして使うにも良いです。ブロードバンドで高速なネット回線が引けるようになると、インターネットラジオで海外の音楽や英語ニュースを気軽に聴けるようになってきました。これらはCD並みの音質があるわけではないのでパソコンに付いているサウンドカードの音でも構わないのですが、SCA-7511の音を聴いてしまうともうはずせなくなります。CDよりレンジは狭いながらも充分聴かせる音です。このままパソコンのCD-ROMでCDをかければ小型オーディオシステムとして立派に使えます。もちろん、CD-ROMドライブの再生モードはデジタルにして、アナログは使わないようにします。後は質の良いヘッドホンさえあれば一人で楽しむには良い音楽環境になるでしょう。
SATRI-IC仕様比較
型名
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BPM-7110TS (旧)
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BPM-7110HS (Ver 3)
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基板
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1.6tガラスエポキシ
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1.6tガラスエポキシ
表面グランドプレーン付き |
モールド
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プラスチック
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新世代1液型エポキシ樹脂
(高耐熱、高対薬品、高硬度) |
使用抵抗
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カーボン
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金属皮膜
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温度係数
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200ppm
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25ppm
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抵抗精度
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5%
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0.5%
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ピン長
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12mm
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5mm
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最大定格
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最大電流
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150mA
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最大損失
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300mW (BIAS定格:200mW推奨)
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最大定格電源電圧
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+25V,-25V
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測定データ(無差別選別による)
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出力電圧
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5.64V
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5.64V
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歪率(1KHz)
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0.09%
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0.02%
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ノイズ電圧 (入力ショート時)
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ウエイトなし
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0.109mV
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0.107mV
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Aカーブ
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0.051mV
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0.049mV
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入力オープン
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ウエイトなし
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0.11mV
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0.10mV
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Aカーブ
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0.051mV
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0.048mV
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