最高級箔抵抗Vishay Z201

■Z201導入

　最近一部で話題になっているVishay Z201という最高級箔抵抗があります。ここ数日、この抵抗にはまっています。抵抗としては非常に高価な抵抗(1本 \10,000)のため、使いたいところにふんだんに使うことはできませんが、SATRIアンプなら音質に影響の大きい入力抵抗とアッテネータ部の抵抗としては使えます。

　実際に聞いてみると「"精度が上がる"というのはこういうことだったのか」とわかります。トランスポートやスピーカーごとの音色の違いをとても良く出します。どこか少しでも調整がおかしかったり、相性が悪いコンポーネントがあるとそれらが全部音に出てきます。

Vishay Z201ニュースリリース

　Z201を聴くまで、SATRIアンプの入力抵抗を良くすることがこれほど重要なことだとは思いませんでした。PCN巻線抵抗も充分良い音ですが、"音の精度"の点から見るとZ201の方が上だと認めざるをえません。PCN巻線とZ201をときどき差し替えて使いたいところです。

　Z201のニュースリリースを見ると、用途の中に"ハイエンドステレオ装置"が含まれています。産業用としてだけでなく、オーディオ用としても使えるように開発された点にも好感が持てます。

■試聴

　試聴には、CT-1010(高精度クロック、外部電源付き)トランスポート、SCA-7511Mk2(V4.3、PCN巻線アッテネータ付き)、スピーカーにCASTRON Mk2 SE/Mk1 SEを使いました。SCA-7511Mk2の入力抵抗にZ201を取り付けて試聴開始です。

銅板トランスポートCT-1010 (高精度クロック付き、外部電源付き)

CASTRON Mk2 SE/ Mk1 SE 販売価格 CASTRON Mk2 SE \283,500(1本) CASTRON Mk1 SE \189,000(1本) 納期 : 約1ヶ月

・最初は普通
　交換した当初は、細かい音は良く出ますがすごいという感じはなく、優しく柔らかい音に聞こえます。PCN巻線に近いトーンです。Vishay VSRのシャープな音に比べると正反対と言えるほど柔らかい音です。VSRのように超ワイドレンジでもなく、普通のバランスに聞こえます。中低域が厚く出ますが、これはCT-1010銅板トランスポートの性格がそのまま出ているためです(他のトランスポートに替えてみると音が変わるので確認できます)。数時間エージングすると能力の片鱗が少しずつ見えてきます。

・誇張感が皆無
　Z201は特定の帯域に強調されたところがなく聴感上フラットです。Vishay VSRも全帯域に渡って聴感上フラットですが、金皮抵抗は高域が多少強調されますし、DALE巻線抵抗は中低域の量感が感じられます。Z201は本当の意味のモニターとして使える抵抗と思います。

・適度な暖かさ
　Vishay VSRは超ワイドレンジでフラットですがどこか冷たいところがあり、ボーカルでは不満が出ることがありましたが、Z201は冷たさがなく適度な暖かみを感じます。こちらのほうが原音に近いと思います。

・歪み感のなさ
　歪み感が少ないため、音量を上げていってもうるささが感じられません。今までは歪み感込みで聞いていたのでしょうか。今までと同じ音量ではもの足りなく聞こえてしまい、自然に音量が上がっていきます。うるさいと感じていたくらいの音量がむしろ気持ち良いと感じます。歪み感のない大音量サウンドは生演奏に近くなります。今までは音量を上げ過ぎるとうるささのため音楽に集中できませんでしたが、Z201を取り付けるとそのようなこともなくなり、これまで以上に音楽を楽しめるようになりました。SATRIアンプは、回路はだいぶ進化してきましたが、良い部品を使うことでまだまだ音質アップが計れることが確認できたのは収穫でした。

・ボーカルのサイズが小さい
　これまで聞いた抵抗の中では、センターに定位するボーカルのサイズが一番小さくなります。中域の歪み感が少ないので、音量を上げたときのボーカルがとても生々しくなります。V4.3とZ201の組み合わせではまだ少し曖昧な部分がありますが、SATRI-IC-SPとZ201の組み合わせなら文句なしにきれいなボーカルが聴けます。

・大音量が普通になる
　SCA-7511Mk2に標準で付いている入力抵抗は普通の金皮抵抗です。高域に強調感があり、音量を上げるときつさを感じるので、あまり大きな音量では鳴らしませんでした。SCA-7511Mk2は小型アンプなので電源が弱いせいかと思っていました。ところが、Z201に替えると、刺激的な音が出ないので普段聞かないほど大きな音量にしても普通に聴けてしまいます。というより、非常に歪み感、刺激感がないので、今までと同じ程度の刺激を求めようとするとどうしても音量が上がってしまいます。それほどスムーズな音です。今まで出ていた音はかなり人工的な刺激が含まれていたのではないかと思うくらいです。Z201の音を聞いて、はじめて大音量でまともな音が聴けたかも知れないと思いました。

・音量に関係なくスケール感が出る
　スピーカー周辺と自分との間の空間が一段と広がります。サウンド空間に包まれる感じがします。
金皮抵抗では奥行きが浅くなり、左右も狭くなり、音が前に出てきます。

・最高グレードの品質
　Vishay VSRはいかにもハイファイと言わんばかりのワイドレンジさとクールさが目立つサウンドでしたが、Z201では中域から高域にかけての質感の良さと歪み感のなさ、押しつけがましく前に出てこない定位、落ち着いた品位の高さが特徴です。大音量のロックもうるさくなく、楽しく聴けます。
　音楽ジャンルに関係なく、より本物らしいサウンドが出てきます。録音現場の音が再現されていると思えるほど品位が高い音場が再現されます。Z201が出す高域は、いかにも「出ています」という高域ではなく、細かく自然です。それでいてどんな細かい音でも妥協なし、曖昧さなく出してきます。この点、PCN巻線抵抗とは少し違います。PCN巻線抵抗では細かい音は同等に出るものの、優しく出してきます。

・スピーカーの違いによる差がよく出る
　CASTRON Mk1 SEとSCA-7511Mk2の組み合わせでは、Mk1 SEの設置位置がMk2 SEより外側にあるためか、横方向の広がりがあり、オーケストラがステージに並んで演奏している感じが良く出ます。スピーカー間隔が広いため、センター定位がよくわかります。Mk1 SEは小型なのでMk2 SEに比べるとあまり低音は出ませんでしたが、Z201を入れると不満なく出るようになります。Mk2 SEは元々低音が良く出るスピーカーですが、Z201を入れるとすごい迫力です。とても15Wのアンプから出る音とは思えません。音量を上げると、今まではフルパワー近くでアンプが飽和したような鳴り方になっていましたが、それもなくなり、大きな音量でも気持ちよく聴けます。

・ケーブルのグレードアップよりZ201導入
　ケーブル交換は、誰でも簡単にグレードアップできる方法ですが、今回の経験から、従来の抵抗を使ったまま高級ケーブルに交換した場合、評価が変わってしまう可能性があるのではないかと思います。入力に金皮抵抗を使ったSATRIアンプと組み合わせてちょうど良いバランスで鳴るケーブルを導入したとすると、金皮抵抗の高域のきつさを抑える音色のケーブルのはずですが、そのようなケーブルでは、Z201に交換すると逆におとなしくなり過ぎてしまうはずです。するとまたシステムのバランスが取れるケーブルを探さなければならなくなります。先にZ201を乗せてからそれに合うケーブルを探せばケーブルを交換する無駄を避けることができます。今回の試聴で、Z201を越える抵抗は当分出て来そうにありませんのでクオリテイの点からZ201を交換する必要はないでしょう。

　普通の入力抵抗からZ201への交換は、プリ→パワー間などのケーブル交換より効果が高いかも知れません。特に、中域の透明感と癖のなさ、高域の歪み感のなさはケーブル交換では聞いたことがない音です。もちろん今まで使った他の抵抗でも聴けなかった音です。もちろん、高級ケーブルに交換する良さもありますが、それにZ201を追加したらさらに良くなるのはほぼ間違いありません。SATRIアンプを使ってさえいれば、高級ケーブルを買うのに比べてずっと安く、良い音が出せます。

・Z201+V4.3 と Z201+SATRI-IC-SPの違い
　Z201を使ってもV4.3ではもう1つ解像度が甘いと思える部分がありましたが、SATRI-IC-SPとZ201を組み合わせた音は鮮度・解像度とも最高です。SCA-7511Mk2-SP 1台でこんな音は聞いたことがありません。PRE-5410Mk2-SPを追加したかのような品位の高い音が出ます。

■まとめ:現時点で最高の抵抗

　3日ほど聴いた感想としては、抵抗1本でこれほど楽しめたのは久しぶりです。うるさい音は嫌いなので、今まで大音量で試聴することはあまりありませんでした。今まで大音量を出してもうるさくもなく耳ざわりでもない音を聴いたことがなかったので、今回それを味わえたのが新鮮な体験でした。今日、たまたまSATRIアンプの試聴に訪れたお客さまも驚いて帰られました。

■Z201取り付けサービス

　今回取り寄せたZ201をSATRIアンプに取り付けてみたい方にZ201取り付けサービスを行います。
ご希望の方はメールでご注文下さい。Z201抵抗だけのご注文も可能です。