HDA-5210-SPは、HDA-5210にSATRI回路V9.0を追加し、改良したモデルです。SATRI回路V9.0は、カレントミラー回路の動作を今までより正確に行わせるための回路です。HDA-5210をお持ちのお客様は有償でV9.0を搭載できます。
HDA-5210-SPは、これまでのSATRIアンプの中でもかなり異色です。
1.SATRI回路なのにSATRI-ICを使っていない
2.電圧出力と電流出力がある
これまでのアンプには必ずSATRI-ICが使われてきました。SATRI回路の心臓部ですし、ICが故障してもすぐに修理ができるためお客様を長くお待たせしないというメリットもあるからです。今回のHDA-5210-SPでは、SATRI-ICを使わずSATRI回路を構成していますが、SATRI-ICと同じではなく多少簡素化した回路になっています。基板全体で見ると、同じクラスのSCA-7511と比べ部品点数がだいぶ多いことがわかります。これはSATRI回路をディスクリートで組んだことと、通常の電圧出力に加え、電流出力回路まで1枚の基板に搭載したからです。これだけの部品点数で、さらにアッテネータまで標準搭載して、よくこの価格に抑えられたと思います。
さて、最もユニークな電流出力ですが、一般的な電圧出力と何が違うのかです。左の測定図はCLIOwinで測ったAKG K-501のインピーダンスカーブです。
AKG K-501インピーダンス特性
インピーダンスの下限は120オームですが、100Hz付近と4KHz以上で持ち上がっています。電圧出力の場合、このようにインピーダンスが一定でなくてもアンプが同じ電圧を出すように働くため、このインピーダンス変動が出力電圧に影響を与えることはありません。
ところが、このようなインピーダンスカーブのヘッドホンを電流出力アンプで鳴らすと、インピーダンスの大きな周波数ではそれに比例した電流が流れます。結果として、インピーダンスが持ち上がっているところの音が大きく出てきます。AKG
K-501の場合、100Hz付近と4KHz以上が持ち上がったバランスで聞こえます。
このように市販のヘッドホンのインピーダンスは一定とは限らないので、電流出力で聴くといろいろなバランスで聞こえることになります。しかし、これは必ずしも悪いことではありません。高域や低域があまり出ないヘッドホンを電流出力で聴くと、ちょうど良いバランスになることもあります。AKG
K-501の場合はインピーダンスだけを見るとひどいドンシャリになるように思いがちですが、聴いてみるとそれほどひどくはありません。トーンコントロールで低音と高音を少し持ち上げた程度に聞こえます(実際には高域は20kHzに向かってぐんと持ち上がっていますので、トーンコントロールでは同じように持ち上げることはできません)。
AKG K-501での音の印象
AKG K-501では、電圧出力のとき、電流出力の音に比べるとやや平板でもったりした印象になります。それだけ電流出力の方がキレが良いということですが、低域と高域のかなり高い部分が少し強調されたように聞こえます。しかし、グラフィックイコライザーなどで低域と高域を持ち上げたときの音とは違い、すっきりした音になるところが電流出力の特徴かと思います。電流出力では、使用するヘッドホンによって音の印象がかなり変わることが指摘されています。
ではどのヘッドホンもK-501に似たカーブなのでしょうか。手持ちのヘッドホンを測ってみました。全てCLIOwinによる実測です。
各ヘッドホンのインピーダンス特性
ゼンハイザー MX-500 インピーダンス特性
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ゼンハイザーのインナーイヤータイプMX-500の特性です。ほぼ600オームのまま一直線です。このようなヘッドホンではインピーダンスの影響を受けないので電圧出力と電流出力の周波数特性は同じになります。音は、電流出力の場合、なぜかどの音も生き生きします。 |
Ethimotic ER-4S インピーダンス特性
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Ethimotic ER-4Sのインピーダンス特性です。2.5kHzの持ち上がりは音響補正抵抗が入っているためと思われます。平均100オーム程度です。電流出力ではやはり高域が持ち上がり気味になります。 |
Ethimotic ER-4P インピーダンス特性
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Ethimotic ER-4Pのインピーダンス特性です。2.5kHzの持ち上がりは音響補正抵抗が入っているためと思われます。平均25オーム程度のため、高域の持ち上がりが顕著に出ます。音も高域がだいぶ持ち上がり気味になります。 |
Panasonic インナーイヤー インピーダンス特性
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PanasonicのポータブルCDプレーヤーSL-CT710に付属してきたインナーイヤーヘッドホンのインピーダンス特性です。ゼンハイザーのMX-500に近く、ほぼ16オームのまま一直線です。 |
このように、市販のダイナミックヘッドホンのインピーダンスは実際に測ってみないとどういうカーブになっているのかわからないのが普通です。
電流出力では、インピーダンスが高いとそれに比例して大きな出力が出てきます。HDA-5210-SPで高インピーダンスのヘッドホンを使ったとき、鳴りっぷりが良いと感じたのはそのせいかも知れません。
◎基本オプションと価格
HDA-5210-SP価格表(税込)
※各アッテネータご紹介ページはこちらです。
Typeの意味
Type A: |
HDA-5210-SP独自回路 |
Type B: |
SATRI-IC-SP+V5.1レジン搭載
(※HDA-5210-SPにはありません) |
Type C: |
SATRI-IC-SP+5.1テフロン搭載
(※HDA-5210-SPにはありません) |
上記オプション以外にも、さらに洗練された音質をお求めの方向けにカスタム化の作業をお受けしています。
◎ご注文方法
メールかFAXでご注文できます。お好きな方法でご注文下さい。
詳細説明を読んでからにしたいときはこちらへどうぞ → [ご注文の詳細説明]
◎保証
・キット製品は、完成品と同じパーツを供給することを保証致します。
・故障パーツの無償交換は、製品到着から1ヶ月以内です。
詳しいご説明はこちらです。→ [保 証]
◎修理規定
キット製品の修理は、納品時の不良パーツ交換以外は有償修理になります。
詳しいご説明はこちらです。→ [修理規定]
◎自宅試聴
自宅試聴をご希望のときは『試聴屋』までご連絡下さい。
詳しい説明はこちらへ → [自宅試聴をどうぞ]
◎仕様
HDA-5210-SP
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入 力 |
電圧 x 2 |
出 力 |
電圧出力 x 1、電流出力
x 1 (両方同時使用可) |
適合ヘッドホン
インピーダンス |
8Ω〜600Ω |
ゲインコントロール |
アルプス製ボリューム使用 |
ゲイン設定 |
後部スイッチにて電圧ゲイン-10dB、電流ゲイン-10dB、-20dB
(電圧ゲインアッテネータと併用時) |
サイズ |
H76 x W235 x D345 |
重 量 |
2.6kg |
◎SATRI回路の動作原理
SATRI回路とは、従来の増幅回路とは増幅の概念が全く異なります。SATRI回路は増幅機能を2本の抵抗の比で行えるように工夫した新しい増幅方式です。従来の回路を使った増幅器と異なる次のような特徴があります。
- 入力インピーダンス0(ゼロ)、出力インピーダンス∞の回路です。
- 電流で動作するアンプです(ただし一般的な電流アンプとは異なります)。
- トランジスタの増幅機能を使用していないため、従来のアンプのようなgmの非直線性が原理的に発生しません。
- 電流を規制しませんので原理的にスルーレート問題が発生しません。
- 原理的に歪を発生しない回路のため、負帰還をかける必要がなく、トランジェント歪が発生しません。
- RLをボリュームとすることで、増幅度そのものをコントロールすることができるので、ボリュームの位置によるS/Nの悪化を最小限にとどめることができます。これは特に小音量再生に優れることを意味します。
- 負帰還など時間を乱す要素がないので、現実音に近い自然な再生音になります。
などの優れた特徴を持っています。詳しいご説明はこちらへ → [SATRI回路の解説]
◎お問い合わせ
会社名 |
有限会社タキオン 「試聴屋」 担当:山崎 |
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03-5296-9265 |
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