SATRIアンプユーザ
石田邸(その2)
石田邸のシステム紹介その2です。前回の紹介からまた構成が変わっています。少し前から電流アンプ構成に変更されています。今回はその電流アンプをAMP-5511Kモジュールを使って構成したものと、同じくAMP-5511Kモジュールを4枚使ってBTLにした構成の紹介です。
2000年5月現在のシステム構成です。
CDトランスポート
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INFRA6000+銅ベース
システムクロック別回路発振、出力リクロック、ハイレベル伝送仕様に改造済み |
DIgitalケーブル
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Aural Symphonics
Digital Statement V2.0i |
DAC
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BP DAC-2000 |
プリ
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自作 SATRI-LINK対応、SATRI増幅方式 |
デバイダ
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自作 SATRI-LINK対応、山根式(1KHzクロス) |
パワーアンプ1
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低音用 AMP-5511Kアンプモジュール使用
BTL 50W
+定電流アダプタ 100W |
パワーアンプ2
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高音用 AMP-5511Kアンプモジュール使用定電流アンプ
25W |
スピーカー1
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低音
ScanSpeak 18W8545にMDF17L密閉箱+真鍮デッドマス追加
中音 Dynaudio M560D
高音 Dynaudio T-330D
8kHz 12dB/oct LCネットワーク |
ケーブル
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BP WP-1、WS-1 |
◎AMP-5511K用アンプ部を使ったBTLアンプ
AMP-5511K用アンプ部は、モジュールとして既に完成品なので、後は電源とケースを用意すれば簡単にアンプ作りができる便利なユニットです。自分でケースなどを工夫すればそれはそれで楽しいのですが、中身の方も少しバリエーションを増やしてBTLアンプを作ってみました。
最初はマルチ用の2チャンネルアンプを作る予定で、どうせ2組のアンプを入れるならBTLにもなるようなアンプを作ったらと思ったのが始めでした。
いつもBTLで問題になるのが反転部分をどうするかです。反転バッファを入れるのが簡単なのですが、スペースの都合やその部分の音質が気になるので、SATRI-ICの反転回路をうまく使えないかと考えました。要は、左右片チャネルのアンプモジュールを反転アンプにすれば良いので、SATRI-ICの出力(NOUT)をもう一度反転入力(PIN)に戻し反転出力(POUT)から次段につなげば良い訳です。トランジスタのQ6、7を裏付けとしてエミッタを浮かせて配線すればパターンカットも不要でした。
と、これで済めば簡単なのですが、もう一つDCサーボも反転させなければなりません。OPアンプが2チャンネル入りなら簡単なのですが、そうではないので今回は追加でOPアンプを裏付けしました。反転アンプとして、抵抗2本とまとめて付けます。足を逆曲げして付ければそのまま裏につきます。配線を工夫すればこれもパターンカットなしでできます。
これで回路変更は完成。入力は2つのアンプをパラに接続し、2チャンネルアンプとして使う場合にはスピーカ接続のどちらかを反転させます。BTLとして使う場合にはホット同士をスピーカに接続します。
BTLの良さはハイパワーが低電圧で得られるためと思われますが、電源ともオールOSコンなどの場合には良いですね。でもそれより、狙いは電源電流が相補的になるので電源インピーダンスがバイアス電流を超えるまで殆ど無視できることが大きいと思います。今回の左右の位相反転では片チャンネルの動作でも入力信号の同相成分については同じようなことがいえるので、それだけでも効果が期待できます。
アンプの構成は電源トランスにフェニックスのU字トランス。チョークインプットとして、電解コンデンサにセラファイン10000μF
50Vをパラにして、更に外部コンデンサを追加できるようにしています。VRは進のREによるアッテネータで各チャンネル用に2つ付け、ちょっと不便ですが、BTL時は同じ目盛りにすればバランスが取れます。
まず、通常の電圧アンプ動作にして、各チャンネルの片側だけ動作させて試します。チョーク電源の効果で落ち着いたしっかりした音が出ます。SATRIアンプ系の自然な音が広がり、アッテネータのおかげで分解能の高い音が楽しめます。
次は同じチャンネルで鳴らします。一部同相分が電源変動を打消すようになり、音が締まってきます。いわゆる『インテル駆動』というやつですね。やはり全体がすっきりしてきたために細かい音が良く出るようになりました。BTLにしなくても面白い音です。ただスピーカ接続には注意しないといけません。
最後にBTL駆動ですが、さすがにAMP-5511Kアンプモジュールを2倍使っただけのことはあります。音の出方がしっかりして、エネルギー感がすごいです。全体に静かな中に、出る時はバン!と音が出てくる力強さが感じられ、やはり1クラス上の音がしてきました。
すっきりとした音で、アンプの個性を逆に感じず、スピーカが自由に歌う感じが良く出てきます。今まではスピーカの実力がまだまだ十分に発揮させていなかったのだなと思わせてくれる音が出てきます。
AMP-5511が2台ある方は是非BTLを試して見てください。AMP-5512にはBTLモードが既に用意されています(ただしもう1セット買うことになっても当方は感知致しませんが)。
◎AMP-5511K用アンプ部を使った定電流アンプ
もう1つ、AMP-5511Kのアンプモジュールを使った『定電流アンプ』を作りました。定電流アンプというのはあまり聞かないと思いますが、一般のアンプではスピーカのインピーダンスの変化に関係なく入力信号に比例した「電圧」を出力するのに対し、入力信号に比例した「電流」を出力するアンプです。
定電流アンプにするとどうなるかというと、アンプの出力インピーダンスが100KΩと大変高くなります。これは、今までアンプのダンピングファクターを大きくしていた(つまり出力インピーダンスをなるべく小さくしてきた)流れと全く反対になります。では音は悪くなるかと思うのですが、それが不思議と定電圧アンプとは違った良さが出てくるのです。
まず音の立ち上がりが良くなります。スピーカは高域でインピーダンスが高くなるので、そのままでは定電流アンプは出力が増え高域増強になるので当たり前ですが、周波数特性を補正しても音は少し違うようです。定電流アンプは市販されている製品自体がないので、聞く機会もあまりありません。試してみるには自作しかないようです。
今までは定電流アンプを作るのはなかなか難しく、発振させてスピーカを飛ばしてしまうこともあると聞いていたのですが、今回は何とか問題はなさそうです。
作り方はAMP-5511Kのアンプ部に少し部品を足す必要があります。終段の電流をカレントミラーで取り出し、再合成することになります。このアンプの製作はラジオ技術
2000/6月号に掲載されていますので、詳しくはそちらを見てください。
今はマルチアンプとして使っていますが、シングルコーンでも聞いてみました。電流アンプといえどもアンプの差は出るので、今までの電流アダプタ(定電圧アンプに付けて定電流アンプにするアダプタ)と比べると大分すっきりと歪が少なくなった様に感じます。アンプも一体になったので使いやすさも向上しました。SATRIアンプの素直な音に定電流アンプのパワーが加わったというところでしょうか。ぜひ一度試してみてはどうでしょう。
なお写真の巨大コンデンサは電源に追加したもので、大春さん(大春式セラミックスピーカーで有名)が、ニチコンのNXシリーズをベースにして特注したもので、恐ろしく静かな(元気がないという意味ではなく)音がします。余計な音がせず、入力された音だけが出てくるように聞こえるコンデンサです。写真では、後から追加したたため臨時に上に置いています。図体が大きいのが難点です。