使いこなしコーナー

SATRI回路の解説

SATRI製品FAQ

SATRI製品の鳴らし方
 アース

 エージング
 マルチシステム構成

チューンアップルーム
 自作SATRIプリ
 抵抗比較実験1
 抵抗比較実験2
 抵抗比較実験3
 抵抗比較実験4
 抵抗比較実験5
 ダイオード比較実験1
 LClock XO実装1
 LClock XO実装2
 DAC-2000改造1

トップページ



LClock XOでCDプレーヤーを高精度に(1)

LC Audio "LClock XO"のCDP-X5000への取り付け
兵庫県芦屋市の中村様より


◎はじめに


 DAC-2000Kを年末年始に購入・組み立てた関係で、CDトランスポートを見直すことにしました。CDPには、SONYのCDP557‐ESDを使っていましたが、DAC-2000Kの変換情報量の緻密さに追いつけなくなっていると感じたのです。

 そこで、高級品を購入するのではなく、基本性能が良く、小型で(557ESDは20kgのど級CDPです)可能な限り改造が可能なものという選択肢で、SONYのロングラン機種CDP-X5000を選びました。これは、某オーディオショップでピックアップ系のリジッド化や材質変更ができるという発展性、557ESDとは異なり定評のあるピックアップ固定式であること、構造的に改造がしやすいということなどがその理由です。

 手始めに、デンマークのLCオーディオ社が販売しているマスタークロックユニット(入手時\20,000)を、騙されたと思ってインストールすることにしました。

 このマスタークロックユニットには2種類あり、廉価な「C2」と、ジッタ精度2ppmという「X0」があります。販売店(注:『試聴屋』では販売しておりません。LClockは、東京では海神無線から入手できます)によりますと、X0は「眼前からSPが消える」とのことで、ほんまかいなと思いながら交換に入りました。

 X5000は、実に安直というか試作機のような作りで、(設計者の金井氏ホームページにも設計思想があります)ばらしは容易です。機構系を一旦はずさなければいけないので気を使いますが、構造的には大きな問題はありません。ケーブル類に注意して断線や接続不良を起こさないよう、人体の静電気で半導体素子を破壊しないよう注意します。

 機構系の部品を取り外し、その下部の基板のクリスタルをはずす必要があります。3本足なので、ハンダ吸取器でなければ一方を暖めて引きぬき次に片側を抜くというワザは使えません。私は一応プロ(本当)ですので、網式の吸い取り器を使いましたが、経験の少ない方には網式は、熱を与えすぎる事が多く、基板のパターンを剥離する可能性があるのであまり薦められません。簡易なバネ式のポンプもコツがあり、電動式ポンプが最も良いのですが、持っている人が少なく借りるのも困難でしょう。他の基板で練習し、余分な熱をかけずに吸い取ることができれば網式で良いでしょう。

 以下、写真と共に取り付け方法を説明します。販売店にLC-XOの取り付けを依頼すると費用が結構高いので自作インストールがおすすめですが、高価な装置を壊してしまっても保証しませんのでよく考えてからやってください。また販売店・代理店の方にはご迷惑かもしれませんがごかんべん下さい。


◎取り付け

 CDP-X5000の電源コードをはずします。次に天板のネジをはずし、上に引き上げますと、表示ユニットに接続されたコネクタと、基板につながれたアース線がありますので、コネクタをはずし、アースのプラスネジをはずして天板を取ります。このとき、スピンドルが天板にあたりますので、保護するかよく注意してネジをはずします。アースをはずすとき、すぐ左が電源SWなので、くれぐれも電源コードを抜いておくことを忘れないように。


図1-1

 マスタークロックユニットを実装した後の写真です。はじめに、右側のメカユニットの四方の白い樹脂上のネジをはずし、4本のポールの上にバネで支持されたメカユニットを取り外さなければメカユニット下の基板は裏返せません。メカユニットをはずし、ピックアップとメカユニット全体に保護カバーをつけ、マスタークロックユニットがついている方(後ろ側)へ反転させた状態で基板のネジをはずして、基板をメカユニットと並行に立てることができます。この状態で作業をしやすくするためテープでユニットや基板を周囲に固定します。あとは、吸い取り器で、図1-4のX601のハンダを裏側から吸い取り、16.9344MHzの発振子(図1-2)を取り去ります。


図1-2

図1-3

 マスタークロックユニットは、接着面は10数mm□の面積のある両面テープのついた基板スペーサ(基板側は円筒で上部はネジ穴)を、空いた所に貼り付け、その上に基板をネジ止めする構造ですが、実際は基板をスペーサにネジ止めしてから既存のプリント基板に貼り付けます。

 X-5000では、図1-1、1-5に見えるフラットケーブルのところに何も部品のないパターンのみの箇所があり、待っていたようにぴったり収まります。

 図1-3のように、マスタークロックユニットの電源線を整流回路のダイオード(直流正極側)に接続します。GND線は、出力側とコモンになっていますのでこれで動作します。

 この間、メカユニットと基板は立ったままですので、くれぐれもパターン面やメカに触れないよう注意すること。特に冬場など、静電気の発生しやすい服装でやりますとICを破壊しますので、できればリストバンドアース、ない場合は、

1.周辺のPCなどの筐体アースを触る(もちろんアースしているもの)
2.手に湿った息を吹きかける
3.手を洗う(その後動いて静電気を生じないよう)

 など静電気を放電させる細心の注意が必要です。


図1-4

 図1-4のように、出力線を最短にして(高周波なのにシールドはされていません)X601の3つの穴のうち、アース(黒)を中央に信号側をコンデンサ側にハンダ付けします。



 図1-5、1-6は取付終了後の写真です。


図1-5

図1-6

 メカユニットを戻す際、バネをカバーするゴムブーツにしわがつきやすいので注意して伸ばしてやる必要があります。あとは、分解時の逆の要領でアース、表示部の接続を忘れずカバーを固定します。電気的には簡単な作業なのでテスター等で接続の確認はしませんでした。


◎試聴・音出し

 X5000を購入してあまり日数が経っていないこともありましたが、最初の印象は「耳が切れそう」というような感じでした。シャープなのです。やはりエージングが必要なのか(サンヨーの固体電解質コンデンサOSコンが、ディーラーにより付けられていました)。

 少し時間が経つと落ち着いてきたものの、音像のシャープさ正確さは、DAC-2000Kで感じたときの正確さをさらにサポートするものです。ジッタ2ppmを時間に換算しますと、16.9344MHzの周期が59.05nSですから11.8pS = 0.0118nSの時間変動になります。この精度は測定していませんので疑問点がありますが、メーカースペックを信ずるとして、結構良い数値だと思います。

 ワタシの場合、音質云々の変化というより音像・シャープさが相当変わりました。始めは先に述べたように少しぎすぎすしていましたが、全てが正確です。結構スゴイと思います。

 ワンポイントで録音されたCDなど、販売店の言う「SPが消える」ほどではないにしても、目の前にオーケストラの音像がしっかりと並びます。ボーカルは中央に奥行きを持ってしっかりと定位します。頭を動かしてもあまり変動がありません。これは、基本的にDAC-2000Kを導入した時の変化と大変似ています。

 いつでもそうですが、いい音になったあと再度戻してみると、良い音に耳が慣れていて以前の音の問題点がよくわかり、効果がよく判別できるのですが、今回はプリント基板のパターンをだめにしそうなのでやめました。でも、本当にこのマスタークロックは良いですよ。SATRIと良くマッチすると思います。オーディオの時間精度と言う点で、全く同じ基本思想に立っていますから、音質のミスマッチということはないと思います。現在は、CDP-X5000 LCXO改+DAC-2000K手離せません。私のぼろSPでもかなりな音で鳴ってくれます。また、大変コストパフォーマンスの高い部品であると思います。


◎代表的な試聴CD


 (1)インバル/マーラー9番、10番アダージョ、フランクフルトRSO 1987 DENON
 (2)アッバード/ベルリオーズ幻想交響曲、シカゴ響 1984 ポリドール
 (3)バッハ/無伴奏Vn、前橋汀子 1989 CBS/SONY
 (4)バッハ/マタイ受難曲、ガーディナー、1989 アルヒーフ
 (5)バッハ/フーガの技法、ケラーSQ, 1997 ECM
 (6)バッハ/無伴奏Vc、鈴木秀美、1995 DHM
 (7)アルヴォ・ペルト/アルボス、クレメール、ヒリヤード 1987 ECM
 (8)クレメール/ピアソラ、1997 WB
 (9)Fuenllana/OrphenicaLyra 1999 GlossaMusic
 (10)アランマレの横顔U/平尾雅子 1999 ALM
 (11)ドミトーリ・ショスタコビッチ/キースジャレット、1992 ECM
 (12)ミズーリ・スカイ/パット・メセニー、チャーリー・ヘイデン 1997 Poly
 (13)清水靖晃/バッハ無伴奏Vc4・5・6 1999 ビクター
 (14)ピーター・アースキン/アズ・イット・イズ 1996 ECM


◎さらにCDP-X5000の改造

 CDP-X5000には、トップローディングのカバーオプションもあるのですが、思いつきでガラスに交換してみました。図面を引いて、東急ハンズで、加工代\6,000。強化ガラスにしたかったのですが、穴あけが問題とかで、普通のガラスになりました。ガラスの共振点が高いことと剛性、質量による音の締まりを狙ったのですが、実際この効果よくわかりません。穴なしなら強化ガラスにできますが価格は\30,000程度になります。焼きなおす強化ガラスのほうが音質にはいいと思います。このガラスドアが図2-1です。1mmのシリコンシートを貼った上ガラスカバーをポリカワッシャを介して六角ボルトで固定しました。


図2-1

図2-2

 図2-2は、X5000天板裏に、鉛板を貼ったところです。もともとメーカーでは、図示した部分のみ貼ってありましたが、全面貼り付けました。私のオーディオ機器は全て、天板や底板にこの鉛板を貼っています。これで、X5000のピックアップ周辺の制振は完了。あまり自信を持って言えないのですが音に重厚さが増して安定したように思っています。


◎自作ATTでの『試聴屋』テフロン絶縁銀メッキ単線の比較

 自作ATTは、試聴屋さんで購入したセイデンのATTキット(抵抗:リケノーム)と、同じくセイデンのロータリーSWで構成した超ど級ATTです。周囲は銅板で囲み、アルミ筐体との間には鉛板、スイッチを回すジョイントには真鍮を使い、ATTの固定には5mm厚銅板を折り曲げ加工したものを使いました。

 最初は、0.5mm単線を使用していました。高音がきれいでなかなかいい音だったのですが、すこしきらきらした感じが気になるのと低域の量感がほしく、試聴屋さんに相談した結果、1.8mmまたは1mmに交換しました。

 図3-1は、ATTの周辺で1.8mmを使っています。図3-2は、線の太さの差が少しわかりにくいですが、セレクトSW周辺で、常時聴くDAC-2000K系統1chのみ1.8mmであとは1mmにしてあります。


図3-1

図3-2



図3-3

 図3-3は、試聴屋さんに一組だけサンプルで頂いたDALEの抵抗を、L-Padアッテネータ出力に直列に挿入し、アンプ側の入力インピーダンスによる影響を防ぐ目的で挿入したものです。周波数特性が変化するなど問題があるように聞いていますが現在は特に問題なく直列に挿入しています。

 1.8mmに交換後、ウーファーが震える感じの低域の量感が補強されたようです。高域のきらきら感はなくなりノーマルなバランスになりました。これは好みの問題でもあると思いますが、バランスはいいです。1mmもほとんど変わりませんが、1.8mmが良いです。ただ非常に硬くて配線しにくいという問題がありますが…。

◎システム構成

 図4-1は、DAC-2000とパワーアンプ(GOLDMUND中古)です。図4-2は、AV関係のレイアウト。


図4-1

図4-2

 TVはほとんど見ませんが、別置きにするとやたらTVをつけたがる家族がいるので、オーディオと並べています。ラックというものがあまり好きではなく、DAC-2000KやGoldmundなど小型機器をいいことに超重ね置きスタイルにしています。機器の間には、以前はサクラなどの木片をはさんでいましたが、いまソルボセインをはさんでいます(すべり止めにもいいですが、音質的にはリジッドではないのではないかという懸念もありますが…)。

CDトランスポート
SONY CDP-X5000改 with LClock XO
CDプレーヤ
SONY CDP-557ESD
DAC
SATRI DAC-2000K
パワーアンプ
Goldmund SR MONO ×2
スピーカ
JBL L112改(内部配線)