SATRI-ICを用いたプリアンプの製作
「ひろせず」主催
廣瀬様より
2000.08.31
★序★
CD → DAC → セイデンアッテネータ → パワーアンプ → SP
というラインアップでオーディオを楽しんでおります。今夏はプリアンプの製作を試みることにしました。参考までに、現用のメインシステムは以下の通りです。
CDP
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SONY-X5000(マスタークロック改造)
INFRA5200(銅板化、リクロック改造) |
DAC
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DAC2.6(リクロック改造、OSコン化、筐体載せ換え) |
M-AMP
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管球式WE300B-S自作(トランスドライブ) |
SP
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B&W ノーチラス805 |
ATT
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自作セイデンアッテネータ− |
マスタークロック、リクロック改造はLCオーディオのクロックを用いていますが、安いC2仕様です。ちなみにX5000はクロックのデューティに敏感なようで、きちんとオシロなどを見て5:5にしないと正常動作しないようです。
★回路★
無線と実験1998年8月号の安井先生の回路に手を加えられたものを、こちらのホームページにも紹介されている岡本氏にご教示いただきました。基本的には安井先生の回路にDCサーボが付加された形になっています。定電圧電源回路は半導体アンプ製作技法(窪田著)に記載されているものにしました。SATRI回路を選んだのは、回路がシンプルになること、音の自然さには定評があること、などの理由が挙げられます。できる限り無色透明な音をプリに求めたいと考えたためです。
★製作の方針★
- 手っ取り早く作るには、某W通商で出来合の基板が売り出されています。当初、私もこの基板を利用しようかと思いましたが、自作することにしました。理由は、MJの記事では電源が左右独立と言うことでしたが、この基板キットは電源部が共用になっている。また価格も結構な額(\54,800円)でした。それから、マスターにはカーボンだけは使わないで欲しいというアドバイスを受けたのですが、しっかりカーボン(RMGではありますが)であったことも挙げられます。
- 部品は定評のあるものを使用しました。回路がシンプルなだけに部品の音がストレートに反映されると考えたからです。
- 抵抗は金属皮膜というアドバイスを受けましたので、とりあえずRE55(ニッコーム)を使用しました。信号が直接通るところはビシェイに変更する予定です。電解コンデンサはOSコンを使用し、耐圧の関係で使用できないところはニチコンミューズとしました。
- ツインモノラル仕様としました。トランスはRコアとしました。
- 電源部は窪田氏に問い合わせると専用基板を頒布するということでしたので、これを利用することとしました。1枚\1,500円です。製作時間が大幅に短縮されました。
- とりあえず電圧入力でプリ基板をつくることにしましたが、電流入力ができるように考慮しました。実際には電圧入力で動作を確認し、ある程度音質を確認して電流入力専用にしようと考えております。この電流入力はDACのDACチップ(1704)の電流出力をそのまま入力するので、SATRI-ICはI/V変換をする形になるわけです。これについても岡本氏の実験結果が大変参考になりましたが、ローパスフィルタをどこに入れるかは、まだ実験中です。
- 毎日家族が使うものになるので、ケースにも気を遣うことにしました。ケースは鈴蘭堂のCL10ALを使用しました。ケースの選定にはずいぶん時間を食いましたが、結局定評あるオーソドックスなものになりました。
★製作★
部品は秋葉原ラジヲデパートの海神無線と若松で入手しました。SATRI-ICは若松で入手しました。トランスはノグチで入手しました。ケースは鈴蘭堂です。シャーシ加工は自宅に卓上のボール盤があるので、比較的容易でした。ハンドドリルもありますが、はるかに楽です。半田は銀入りマルチコアとしました。はんだごては60Wの定温度制御型を愛用しております。
1:電源部の製作
電源トランスは当初TANGOのCW252を使用するつもりでしたが、突然のTANGOの廃業宣言で、あっというまに店頭からは姿を消しておりました。やむを得ずノグチのRコアのPMC2042Wとし、そのかわり左右に一つずつ使うことにしました。
基板は写真の通りです。丁寧に作られています。整流用のダイオードの穴はきちんと大きくなっています。定石通り?背の低いもの熱に強いものを優先して取り付けていきます。電源部の抵抗はRMGとしてあります。
基板の半田付けができたところで、トランスと仮結線を施し動作の確認および出力電圧の調整を行いました。電圧は19.0Vとしました。
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青はOS-CONで緑はMUSEです。半固定VRは3回転型です。
電源ケーブルはオヤイデのLi15でプラグはナショナルのホスピタルです。
2:プリ部の製作
プリ部は当初自分で基板を起こすつもりでしたが、回路を熟慮した結果、それほど複雑なものでもないので、手配線でやっつけることにしました。製作自体はそれほどでもなかったのですが、構想にはかなりの時間がかかりました。写真を見ていただければ(特にOS-CONの並び方)およそわかると思います。信号回路と電源を極力短くすることを念頭におきました。また電源回路は+、-で対称になるように配慮しました。
基板はさらに0.5mm銅板上に載っています
SATRI-ICはソケット付けとしました。インラインソケット(1列型)を使用しました。なお掟破りか?配線の簡略化のために??SATRI-ICに直接半田付けしてしまった所が3カ所あります。他に転用することもないので良しとしました。
最初1枚だけこの方針にて製作し、動作の確認をしました。続けて2枚目を同様の方法で製作しました。なお、現状ではSATRI-IC上の表記とピン場号は逆ですのでくれぐれもご注意のほどを、、、(新バージョン(第3ロット)では修正されるようです)。
3:シャーシ加工
トランスが2個の完全ツインモノラル構成になりましたので、トランス−電源基板−プリ基板が一直線上に、かつ信号と電源の引き回しが最小限になるように配置しました。これも写真を見ていただければわかると思います。配線材は試聴屋さんでわけていただいたテフロン被覆銀メッキの1mmを用いました。一部にオーディオワークスの同様のケーブルで0.6mmを使いました。
プリ部の基板は岡本氏のご教示により、0.5mm厚の銅板上に取り付け、それをシャーシに取り付けてノイズ対策を施しました。シャーシと銅板はポリのネジと六角スペーサを用いて絶縁をし、プリ基板と電源基板の0
(Ground)はコイルと抵抗を介してつなげています。
なおGroundはトランスのE端子とともにトランスの取り付けネジの所で1点シャーシアースをしましたが、ノイズに悩まされることになりました。試行錯誤でアースポイントを探しましたが、結局シャーシには落とさない場合が一番という結論に達しました。現状ではノイズは皆無です。
音量調節は当初SATRIの定石通りとしていましたが、DCサーボとL型アッテネータではクリックノイズの呪縛から逃れられないと言う示唆を受けましたので、バッファの後につけました。SATRI用のアッテネータを作らないと駄目ですね。アッテネータが入るべき所には、現状ではビシェイの12Kを入れてあります。将来の電流リンクではここにローパスを入れようと実験中です。
外観は写真の通りです。切り替えがありませんからSWとPL、それに音量調節のつまみだけです。つまみはフィーリングが良いものかつアクセントにしようと考え、ちょっと奮発して高級品を使いました。このシャーシのパネルは4mm厚ですので、穴あけ中に刃を折るとやっかいなことになります。
★試聴★
パワーアンプが現状ではWE300Bという良くも悪くも「色がついている」状態(しかもトランスドライブ)ですので音色面の評価は難しいかなという感じですが、ご容赦を、、(実は窪田式0dBアンプを作ったのですが、現状ではまだ完全にエージングが済んでいませんので、、、)
で、あえて行えば、、
- 音場の再現性が極めて良い。
デジタル信号をリクロック改造しますと、音場の再現性が非常に高まることを経験していますが、これがさらに向上するようです。特に演奏者と録音場所までの距離感がよりわかるようになります。また音像がシャープで楽器が巨大に聞こえるということがありません。実物の楽器の大きさがわかるようです。実験中の電流入力では、さらに良くなります。というか電流入力にすべきではないかとすら感じています(DAC-1704チップの電流出力をそのまま入力する)。
- プリをつないだ場合とつながない場合とで音色の変化はほとんど感じない。
ということはやはりノンカラーと言っていいのでしょうね。ノーチラス自体もノンカラーが売りですから、色はWE300Bということでしょう。エージング中の0dBアンプと聞き比べると、はっきりと違いがわかりました。なぜWE300Bの虜になる人が多いのかその理由も改めてわかるような気がします。特に弦楽器の音に好みが分かれるかな。パワーアンプ(とSP)の個性を明確に引き出すようなプリだと感じます。
- 空気感の表現力が良い。
ティンパニー、バスドラムといった大型打楽器の音は音というより空気の振動を肌で感じることが重要だと感じています。決して大口径ではないノーチラス805でもこれらの振動を明瞭に表してくれます。トーンコントロールで強調された低域とは全く次元の違う低域です。またシンバルやトライアングルなども金属の質感や振動の様子が非常に明確です。
★今後の方針★
とりあえず電流入力専用にすべくローパスフィルタをどうするかが問題です。素人ですのでごく単純な(RとCを使うくらい)ものしかできませんが、、、というわけで、まだきちんと腹は締めていません。電流入力となるとプリではなくI/V変換アンプとなりますね。とすると、現状ではDACから線を引き出しているのですが、DAC本体にこの部分だけでも納めてしまうというのもありか、と考えています。
最後になりましたが、製作にあたりご示唆をいただきました岡本氏、マスター氏、抵抗についてのご示唆をいただきました近藤氏に改めて感謝いたします
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