はじめに
AMP-5512K
BTL
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20世紀も終わりに近づいた12月のミレニアムセールにてAMP-5512用のアンプ部ユニットとOS-CONの電源部ユニットが出ていました。アンプ部については、以前からBTL化を考えていたのですぐに決断できたのですが、OS-CONの電源部は予期していなかったので迷った末に購入しました。
これまで、AMP-5512Kを1年半以上使用してきて十分満足してきましたが、悪魔のささやき?が私の背中をBTL化へプッシュプル?したようです。
最初は、電源部とアンプ部をひとつのシャーシに収めようと、いろいろ図面を引いたのですが、収まったとしてもかなり大きくなったしまうことと、メンテナンス面と作り易さを考えて、電源部とアンプ部の2つのシャーシに分けることに落ち着きました。
大電流が流れる電源部なので、プリアンプはともかくパワーアンプの電源部別シャーシは不安だったのですが、今のところ特に問題ないようです。
電源部シャーシとアンプ部シャーシは、メタルコンセント(7極)を用いた6芯ケーブルにて接続して、電源部から整流、平滑後のDC出力をアンプ部に左右独立で供給しています。OSコン電源部ユニットはアンプ部側に設置しました。
シャーシは、当初全て市販のものを使用する予定でしたが、オリジナルのものを作りたかったため、アンプ部だけは放熱器とアルミ板等を利用して作成しました。電源部はタカチのOSシリーズを用いました。
アルミ板、銅板、アクリル板は東急ハンズで購入し、大きな穴あけや切断をしてもらいました。10mm以下の穴あけやタッピングは自分で行いました。ハンドドリルしか持っていないため、放熱器への穴あけは垂直に開けるのが大変に難しかったです。
アンプ部
AMP-5512K
BTL正面
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アンプ部はデュアルモノ構造になっています。
鈴蘭堂で見つけた一番大きな吉川金属製の放熱器にアンプ部ユニットを取り付け、これをシャーシの構造体(側板)として使っています。このため、放熱器には天板、前後板が取り付けられるようにアルミアングルが取り付けてあります。
シャーシの構造体として使用する都合上、もう少し大きな(高さが150mm、長さが450mm程度)放熱器が欲しかったのですが、130mm
x 350mmがカタログ上の最大だそうです(特注すればこれ以上も可能だとのこと)。
底板は5mm厚のアルミ板を使用し、放熱器の底部にM4のタップを切り直接ネジ止めしてあります。
余談ですが、深さが5mm以上の穴を開けようとするとハンドドリルでは、真っ直ぐな穴を開けるのが難しくボール盤が欲しくなります。
まん中には後面に設置したセレクタスイッチから前面のノブへ続くシャフトが通っています。セレクタは、セイデン製の2段8回路3接点のものを使い、電圧入力、電流入力(SATRI-LINK)ともに両切りにしてあります。
音量調整用のアッテネータは、試聴屋さん特製のセイデン製ロータリースイッチに、使用頻度の高い11接点のみDALEの巻線抵抗NS-2Bを使い、残り12接点はDALEの金属皮膜抵抗CMFを使っています。
4連の特注も考えましたが、作り易さとチャネルセパレーションを考え、左右独立にしました。
固定抵抗を使用したアッテネータなので、左右のバランス設定も簡単にでき、これで良かったと思います(通常のボリュームだと4連を使わないと左右のバランス調整が大変難しいです)。なお、セイデン製のロータリースイッチは全て試聴屋さんから購入しました。
AMP-5512K
BTL背面
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OS-CONの電解コンデンサー集合ユニットは底板に取り付けてあり、電源部からのDCを直接受けています。電源スイッチは、電源部にあるのでR、Lチャンネルそれぞれに設置した赤色LEDで電源の状態が判るようしています。
BTLは、正負信号のバランス調整が必要ですが、調整用の可変抵抗が1回転型で調整がしづらいため、コパル電子の18回転型のRJ9Wに交換しました。3回転型のTM7Pも試しましたが、多回転型にもかかわらずRJ9Wの方が音が良いような気がします。ただし取り付け前に、おおよその抵抗値に合わせておかないと、後の調整に手間取ります。
このBTLのバランスの調整の善し悪しでかなり音が変化するようです。交換前は、調整が難しく正負の差が0.5%(2Vで10mV)までしか追い込めなかったのですが、交換後0.05%以下(2Vで1mV以下)まで追い込め、以前は滲んだようだった細かい音の輪郭がハッキリとするようになりました。
エミッタ抵抗も試聴屋殿から購入したDALE製のメタルプレート型に2ヶ月ほど経ってから交換しました。
主な構成部品
・AMP-5512K用アンプ部ユニット x 2
・AMP-5512K用OS-CON集合ユニット(5、000μF) x 2
・吉川金属製放熱器50F350-130 x 2
・試聴屋特製セイデン製2段2回路23接点ロータリースイッチ
(DALE巻線抵抗アッテネータ用) x 2
・セイデン製2段8回路3接点ロータリースイッチ(セレクタ用)
・WBT製ポールターミナル(WBT-0735)
・スーパートロン製RCAピンジャック
・七星科学研究所製メタルコンセント(7極250V10A)
・外形寸法 380(W)X 160(H)X 390(D)mm
側板(吉川金属製放熱器50F350-130 x 2)
底板(アルミ板 5t)
天板(アルミ板 3t + 銅板 0.5t + ヘアライン仕上げアルミ板 1t)
後板(銅板 2t)
前板(アルミ板 3t)
化粧板(ヘアライン仕上げアルミ板 2t + スモーク仕上げアクリル板 5tの2層サンドイッチ構造)
・重量 約15Kg
電源部
AMP-5512K
BTL電源部
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電源部のケースは、タカチのOS133-37-43BXを使用しましたが、底板の厚さが2mmと強度的に不安なので、アルミアングル材で補強してあります。また、足もTAOC製の鋳鉄ベースを5個使用してトランスの重さを支えています。
電源トランスは、秋葉原をいろいろ探したのですが、手ごろなものがなく、結局インターネットからフェニックスさんに17V
x 2 x 12AのRコアトランスRA400を2個注文しました。年末の忙しい時期でしたが、1週間程で送られてきました。また、値段も十分に納得いくもので機会があれば今後も利用させて頂こうと思います。RA400は重量が1個あたり約6.5Kg、(2個で13kg!)とかなり重いので、できれば5mm以上の厚さのアルミ底板が欲しいところです。
整流用ダイオードは、今まで日本インター製のファーストリカバリダイオードC25P40F/Rを使ってきましたが、今回は同じ日本インター製のショットキーバリアダイオードKCH30A15とKRH30A15を4ペア使い左右、正負独立整流しています。
電解コンデンサは、エルナー製のセラファイン35V22,000μFを4個を海神無線さんから購入し、半年ほど使用していました。
しかし、高音よりのバランスと少し曇ったような中高音がしっくり行かず現在は、ルビコンのブラックゲート35V4,700μFを片チャネル4個づつ計8個使用しています。AMP-5512Kのときも、パナソニックのXpro等を試し結局ブラックゲートに落ち着いた経緯があります。
容量は、約半分になりましたが音質的には、鮮鋭度が増しもやもやが晴れたような感じです。アンプ部へは、整流、平滑後のDC出力を送っています。
電源部はスペース的にまだ少し余裕があるので、今後いろいろと遊べそうです。
主な構成部品
・フェニックス製RコアトランスRA400(17Vx2 12A) x
2
・日本インター製ショットキーバリアダイオード(KCH30A15、KRH30A15) x 4
・ルビコン製ブラック・ゲート電解コンデンサ(35V4,700μF) X 8
・七星科学研究所製メタルコンセント(7極250V10A)
・外形寸法 370(W) x 169(H) x 440(D)mm
タカチ製OS133-37-43BX
・重量 約19kg
AMP-5512K
BTL上面
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AMP-5512Kアンプブロック
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アンプブロック裏面
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抵抗アッテネータ
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試聴
システム全景
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試聴は、CDP-XA50ES改(マスタークロックをLCAudioのLclock
XOに交換済み)のデジタル出力をDAC-2000K改に入力し、DAC-2000Kの電圧出力、電流出力(SATRI-LINK)をAMP-5512BTLに入力した、2通りで行いました。
なお、DAC-2000Kは初期型のもので、DAC基板部のみをVer.2に換装し、シールド(2mm厚銅板を使用したインナーシャーシ追加)と電源の強化(オリジナルのRコアトランスと、OSコンユニットをアナログ電源のみに使用し、新たにデジタル電源用にIE型トランス2個とOSコンとファーストリカバリダイオードの整流部2組を追加)を行っています。
DAC-2000K改
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比較試聴CDは、聴き慣れた Bill Evans Trio の Waltz
for Debby (VICJ-60292) などジャズが中心です。
BTL化の一番の印象は、アレッと思うほど低音域を含めた音全体が自然なことです。雑誌などの評論などから先入観として、BTL化するともっと強烈な低音が出るのかなと思っていたのですが、あっさりと裏切られました。
しかし、ひとつひとつの音を注意して聴くと、BTLの方が低音域が伸びているし、厚さ、安定感もあるのですが、全体の感じとしては、肩透かしを食らうほど自然です。ちょい聴きの聴感は、AMP-5512Kの方がメリハリがあってHI-FI感があります。
どうも全体のバランスが良いのである音域だけ目立ったりということがないように感じられ、上記の様な印象になったようです。
BTLのバランス調整が正しく取れた後は、非常に解像度が高く繊細感があります。BTLのバランス調整用の半固定抵抗が調整しづらく、1%程度(1Vで10mV)程度の差があった時は、少し線が太い感じがしたのですが、調整後0.1%以下(1Vで1mV以下)まで追い込むとグッと繊細感が増します。
良く、AMP-5512Kは線が細いと評されることがありますが、音が弱々しいというのではなく解像度・繊細感が高いのだと思います。BTLの方は、解像度と繊細感を持ちながら、かつ芯の太さを感じさせます。
両方のアンプともに、観客のざわめきや拍手などライブ演奏の様子があたかもその場にタイムスリップしたように感じられますが、BTLの方がより実在感、リアリティがあります。対するAMP-5512Kは、少し箱庭的な部分がありますが、これはこれで良いものです。
聴感上の左右のセパレーションは、完全な電源の左右分離、デュアルモノ構造が効いているようで、非常に良いです。
スピーカが、凄く自然な鳴り方をするので、何時間でも聴いていられし、聴きながら寝てしまうのが以前よりも多くなったようです。(それとも最近疲れているから?)。また、音量を上げても全然うるさくならないので、ついついボリュームを上げてしまいます(私自身は、どちらかというと小音量派です)。
DAC-2000K改とのSATRI-LINK接続では、若干高域側にシフトします。また、電圧入力の方がメリハリ感があるようです。
次は、AMP-5512K改と一緒にバイアンプに挑戦したいと思います。
AMP-5512
BTL 2/Sep/2001