PRE-7610
V5試聴記
熊本の福田様より
SATRIへの長い道は延々と続いています。さて先日、オーディオ道場へ遊びに行きましたら、道場主の片山さんが、ぬふふと近づいてきて、あたしの耳元で
「聞きなさい君、SATRIプリにSATRI新IC・ヴ―ジョン5を
搭載させたのだ。まあ聞きなさい」
というので、はあはあと言いながら、いろいろと聞かせてもらって、あたしは、ひさしぶりに仰天した!!。
DAC-2000→SATRIプリPRE-7610→AMP-5540というラインをすべてSATRI-LINKで結び、JBL K2-S5500(そういえばS9800が出ましたね)を歌わせていることは、前回書きました。つまり、今使っているこのプリをバージョンアップしましたということらしいのだ。BP永井さんによると、これにより解像度が旧バージョンの数百倍(?)増したということらしいのだ。
しかし、あなた、そしたら普通のCDがSACDみたいの聞こえんの? アップコンバートするみたいに聞こえるの? そんなことなかでしょうなんて割にいぶかしげな心持ちで道場の音を聞いてみたのね。
まず、みなさん耳タコのビル・エバンスは「ワルツフォーディビー」。
なんなんですか、これ、この音!!
道場のメインスピーカーである「巨大黒色妖怪塗り壁君」いや、ヴァイタヴォックスの音の抜けが前とは全然違う。ベースの音がうんと締まって、しかも下の方までズンと伸びている。シンバルだって、カーンキーンと金属音が飛んでくる。エバンスのピアノの音全部が、ぐんぐんスイングしながら押し出てくる。これまではいい意味であったかい、少しフォーカスの甘い、まったりとしたいい感じ、ううん、やはりビンテージだねぇ系の音だったのに。なるほどこれが解像度ウン百倍の成果と納得しました。
しかし、これだけではなかった!
片山さんは、次に内田光子のモーツァルトのピアノ協奏曲21番をかけてくれた。これは、あたしも所蔵するものですが、最近はまったく聞いていなかった。だってさあ、ぐっとこない演奏だもん(て思っていたのね)。
冒頭の音楽のざわめきから、のけぞった。そして、深く深く音楽にからめとられていってしまったのですね。細かな弦のからみ、木管の繊細な響き、そして、
おお、内田さんってこんなにも、きれいで深い表現してたのねえ
と感心することしきり、、、(しかし、このジャケットの内田さんの顔は、うちの子どもが見て、寝れなくなったぐらい、怖い、怖いぞ)。だって、音が全部きれいに聞こえるんだもん。しかし、なにしろ、音楽の大きなうねりが、鮮やかに、そして克明に描かれます。そうねえ、目の前に音楽の大きな波や小さな波が大岩に砕け散る。その細かい水の泡みたいなものまでが、全体の大きな流れの中に細かに、つぶさに、くっきり見える。そうそ、ハイビジョンみたいな感じですね。バックはECOで、指揮はジェフリーテイトなんだけど、これで聞いて初めてこの人の凄さわかりました。さらっとしているようだけど、実は内側でめらめら燃えているのね。怖い怖いですねえ。なにしろモーツァルトの音楽が凄い!。
「ヴァイタが鳴りきりましたね。
モーツァルトがスイングしてましたね。」
と片山さんに言うと。「パワーアンプだってSATRIの10W(AMP-7511M)なんだよ。このプリ(PRE-7610)なかなかだよねえ」と師匠もなかなかこころ打たれるものがあったようです。今回のSATRIプリPRE-7610バージョアップ版についての、片山師匠とあたしの共通見解は、
1.前はちっとばかり弱かった音楽のエナジーが、全帯域でマッシブに出てくるようになった、これでジャズもばっちり!!。量感がアップしたということ。
2.加えて、解像度が飛躍的に増したので、細かい音まで、さらに聞こえてくるようになった。でもキンキン音じゃなくて、SATRIの一番の特徴である官能的な中音に包みこまれて出てくるので少しもうるさくない、むしろ快感!。質感が増したということ。
いやあ、これは、快挙ですねえ
とふたりでうなずきあいながら、ほれ、お宅で使ってみてと、片山師匠がこのプリを貸してくれました。ですんで自宅のシステムの音がどうなったかレポートします。
自宅のシステムは、冒頭で書いたようなものだったんですが、今は少し、これもバージョンアップしちまったのよね。今までは、AMP-5540でJBLとツイータ(アッテネータをかまして)ドライブしてたんですが、ちょうどAMP-5512の出物がありましたので、これを半ば強奪してツイータ専用のアンプにしておるのです(贅沢ですねえ。いや道楽は贅沢しなくちゃね)。SATRIプリには、電圧、電流それぞれ1系統づつ出力があるのですが、あたしはなにしろ、SATRI-LINKフリークなので、なんとかしてくださいと永井さんに泣きついたら、「そんならオームの法則を利用して、特殊ケーブルを作りましょう」とか言って、同軸の先端に抵抗をいれて、あら不思議!?電圧が電流になる特殊ケーブルをほいと渡してくれた。で、今のところ全段SATRIリンクで鳴っている訳なんです。AMP-5512は出力20W、全段OSコンを使ってまして(みなさんご存知か、、)、音的には、非常に質の高い、深いもので、雑としたところがない。だから、ツイータ用にはいいかなと思ったの。でもなかなか難しかったです。結局、8N電線で自作した電源ケーブルを使うことで、やっと音がそろいました。さらに、CDPとDAC間のデジタルケーブルをO社のシルバーものに交換したら(約3万)、音ががらりとかわり、もうびっくり!。
こんな感じで、以前レポートした時より、透明感、エネルギー、全てアップ!。若干甘くて、トロっとしてジャズではすこしユルふんかなあと思いますが、オケ、クラッシック方面ではなかなか満足しておる春ののどかな日々。さあ、ここに、この新世代プリを接続します。エージングがまだ効いてないよということだったので、2日ほど電源を入れっぱなしにしておきます。
さて、それでは、Cホグウッドが振ったペルゴレージのスタバート・マーテルを聞いてみます。これってカウンターテナーとソプラノ、そしてオリジナル楽器という三拍子で、再生難しいんですよね。しばし傾聴、、、。
ああ、これはよいです。ははは。
今まで聞こえなかった響きが聞こえる。音にまったく雑味がない。ともかく、やさしい響き。いつまでも聞いていたのね。
ジャズはね、最近気にいっているデニー・ザイトリンの出世作「ライブアットトライデント」を聞いてみます。60年代の録音で、クリアーじゃないんだけど、チャリー・ヘイデンのベースがなかなかよいのです。うむ、前より音の重心が下がって低音が充実したように聞こえるけど、まあ、全体的には前とそんなには変わらないかなあという印象です。次にあたしが、今最も愛する指揮者(亡くなりましたが)Gワントの指揮になるブルックナー7番をBPOの演奏で。うむ、たしかに、良いのですが、ペルゴレージほどの感銘がない。音がまったり優しげなのはよいけど、前のプリの方が、透明感が高く、そうねえ、音が目に見えるような感じであった。それに楽器と楽器の距離がわかるというかそういう空間性があったのに、新バージョンではすこし楽器がくっつき音場が狭くなっているように聞こえる。特に、あたしのもっとも愛する弦の音が解き放たれない。どうなってるんだ。特に2楽章の始めあたりでオケが全開するところ、ここが前のプリだとまったくうるさくなく、豊かに、ふわりと広がり、混濁することがなかった。新バージョンプリでもこの傾向は変わらないのだけど、やはりどうしても、音がまったりとして、音場が狭くなって聞こえます。むむむなぜだ!?。よくなるはずだったのに、音が、明らかに好みの音からずれてきたぞ。
ううむと、しばし考えて理由がわかりました。もともと、私のプリはV5化されていたのであった。あたしのプリをBP永井さんに作ってもらった時、V5は、理論的に完成していて、親切にも永井さんは、あたしのプリには基板でなくお手製V5回路を入れておいてくれたのだった。プリだけじゃなくて、メインアンプのAMP-5540、DAC-2000もすでにV5が搭載ずみだったのだった(なんで忘れてたんだよ)。こちらも、すべて手作りディスクリート。基板とディスクリートでは音質が違って当然なのだった。しかも、しかも、おお、今思いだしたけど、わたしのプリは、高級(いいねえ)アッテネータ仕様であったのだ(ははは)。だから、音の整合性から言っても、あたしのシステムではね、相性ベターなのは、あたり前の話で(大汗)、しかもこのラインでえっちらおっちらSATRIの長い道を歩いてきたのだから、自分のプリが自分がしっくりする音を鳴らすのもなるほどもっともな話なのである。借りてきたこのプリは、ボリューム仕様のベーシックバージョンでありますから、これをアッテネーターに交換すれば、間違いなく透明観とか空間性は高まるはずです。
自分のJBLラインでは、道場で聞いたヴァイタヴォックスの用な大きな感動は得られなかったけど、このプリを自分のサブシステムに使って仰天してしまった!。あたしは、サブとしてハーベスCompact HL+SATRIカスタムメイドアンプ(中身はほとんどAMP-5510だけどパワーは80Wなの)+CDP DENON DS10U(OSコン化)+DAC ROTEL(OSコン化)で、ケーブルは、SP、インターコネクトどちらも昔買ったカルダス製を使ってます(これ使うと、音がともかく滑らかあになります)。こちらは、普通の電圧系で接続、SATRIリンクではありませんので、、。
前にも書いたけどあたしのハーベス鳴らなかったのよ。それで、道場でさばいてもらおうと思っていたのだけど、ともかくこのBPの試作アンプを試してよとの片山師匠のアドバイスで使ってみたら、なんと、ああた、これで鳴り出したのです。それも、あったかあい音で。このアンプを使ってやっとハーベスのすばらしさが分かったんですね。JBLの透明感あふるる、音なんか全部出しちゃうよという超前向き路線とは違う、ああ、哀愁のヨーロッパ風である音の陰影、深み、そして温かみ。アメリカとイギリスの音のたたずまいの違いが本当によく分かる。あたし、平日、夜聞くときは、ハーベスを愛玩し、週末気合いれて聞くときはJBLで音楽と対峙してるって訳なんです。いやはやアイアムラッキーパーソンです。
で、ものはためしだってんで、ハーベスラインにこの新プリをかましてみたんです。そしたら、ともかく、あなた、音場が前の倍ぐらいに広がりました。あたしの音楽室は8畳しかないのだけど、今や部屋の大きさを超えて縦・横ともサウンドステージが広がります。そんでもって、これまで埋もれていた音が次々と湧き出てくる。シンバルの音の微粒子もきちんと出てくる。ベースの音もぐわっと出てくるけどうるさくはない。ジャズでも、雑とした音ではなく、迫力はあるがやかましくはない。さて、オケの生々しさはパワー直結した時では、出なかったもので、弦のからみあいの美しさは、おもわず聞きほれてしまいます。そうそ、道場で聞いた、ヴァイタヴォックスの音の傾向とスケールは小さいけど方向性が似ているように感じますね。もの凄くきれいで、高解像度、最高のハイビジョン映像をみてるこころもちでございます(そんなもんみたことないんだけね)。
ブルックナー7番をかけてみます。全奏でも、音はすみずみまで磨き抜かれて、ひとつも混濁することなく、音の微粒子が解き放たれて行きます。ボリュームは結構出てるんですが少しもうるさくないのですね。「もう、これ以上何かいるのかしらん。」と思うぐらいの豊穣かつ美麗な音になったのですねえ。ヨーロッパ製のSPには、このプリ、合うのかもしれません。
しかし、これは、困った、
このプリもうはずせないじゃないか
お金をどう捻出したらいいのかなあ。これだけが心配なんだよなあ、、。ああ。SATRIへの道は長いけど、お金もかかるなあ。
まとめ
あたしが自分のシステムで、1週間ほど試聴した経験から言いますね(それ以上のことは言えないですものですね)。今度のバージョンアップしたSATRIプリは、確実に量感・質感ともにグレードがあがっています(きっぱり)。高解像度(ライブCDはいいねえ)だけど、レンジが広がった、とてもきれいな音。音場がさらに広がる。ともかく、スイングするプリですね。これまで、聞いて感動しなかったCDをこのプリを介して聞くと思わず聞きほれてしまうかもしません。でも、絶対大事なのは、プリの極性をきちんと合わせること、もちろん、他の機器もね(これって釈迦に念仏て言うのかなあ)。極性が合ってないととたんに雑とした音が混じります。要注意です。
で、今、片山師匠に電話したら
「君、新しいテフロンバージョンのSATRI-ICができたのだよ。
しかもここには、もうそれがあるのだよ。聞きたい?」
などとのたもうのですから、もう病気のあたしは、聞きたい聞きたい聞きたいと叫んで、さっそく、今や、阿蘇は西原村方面へ駆け去るのであります。
SATRIへの長い道はまだまだ続きます(ああ、もう40なのに、、、)
(了)
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