SCA-7510K試聴記
東京の川村様より
SCA-7510K と EQA-5610K(改)
昨年初秋、約5年間のオーディオ冬眠状態から目覚め、10月「EQA-5610K」製作、手持ちプリメインアンプ改造等に続き、ヘッドフォン&夜間SP試聴用として「SCA-7510K」を購入しました。当初サブアンプとして考えていたわけですが、幸か不幸か予想外の事態となりました。
システム構成
1.アンプ組立及びエージング
商品は20世紀最後の日の午後到着しました。ミレニアムイベントもお構いなく、午後10時頃より組み立てを開始し、新世紀最初の日の午前2時頃とりあえず完成させました。電源を入れ、左右chのDC出力をチェックすると各々20mV程度なので、無調整状態でヘッドフォンを繋いでみました。
ボリュームを最大にしても何の音も聞こえません。
DL-103R/EQA-5610K経由で、よく聞くレコードを何枚かヘッドフォンで聞きました。エージングなしの状態なので、全体にモヤがかかったように聞こえますが、それでも付帯音がなく、音の解像度が非常に高いことが良く分かりました。
元旦の午後からスピーカを接続しました。ボリュームを最大にしてもノイズは出ず、ツィータに耳を近づけてようやく「シー」という音がわずかに聞こえました。音出しを始めたところ予想に反し、CD再生ではボリューム9時位置、レコード再生でも11時位置くらいで普通に聞くには十分な音量が出ます。エージング10時間程でも、現用機KENWOOD L-A1と比べ、明らかに高次元の音が出ることがわかりました。一番の違いは、音が「ワー」と出てきても、音の解像度が高いためかうるさく感じられないことです。透明感のある静かな落ち着いた音色です。
エージング100時間を過ぎると、当初のモヤもなくなり非常に明解な音色になりました。
2.改 造
a) ボリューム交換
ボリュームをDALE巻線アッテネータに交換しました。部品が届いたのはエ−ジングも100時間を過ぎたところでした。「これ以上そんなに良くなるものなのか?」と思うくらいの音になっていたので、アッテネータを組み立てながら過剰投資したのではないかと思っていました。交換した結果は、心配していたことが全くの杞憂だったということです。交換直後から、多少モヤがかかっているような印象があるにもかかわらず、明らかに解像度及び鮮度の高い明確な音になりました。
b) 抵抗交換
エージング120時間後、基板上の抵抗「信号入力部(計2本)/ヘッドフォン用出力部(計4本)」をDALE巻線抵抗に交換しました。当然ながらさらに良くなりました。
c) フィルムコンデンサ交換
DCサーボ系のフィルムコンデンサを、海神無線で紹介されたポリプロピレンタイプに交換しました。低域の解像度が高くなったように感じられますが、直接信号ラインに入っていないためか大きな変化は聞き取れませんでした。
d) 入力セレクタ
入力セレクタを別途製作する予定なので、スピーカ出力ON/OFFをヘッドフォンプラグ部スイッチからこのスイッチに移動させました。
e) 入力用RCAプラグ
(d)の理由で入力プラグが一組余ったので、サブウーファ出力用に変更しました。出力信号は、ヘッドフォン用出力を1組使用しないのでこれを転用しました。
f) 電源コード
「あうでお」氏の記事を参考に電源コードを交換しました。
コード仕様は、オルトフォン製SP用6N/5Nコード*に、ACプラグはフルテック製(ロジウムメッキ)、アンプ側は直付けにしました。交換後の音は、全体にすっきりし解像度が上がったようです。なお、ヒューズはジャンプ*させています。
*定格外の使用方法なので参考にしないでください。トラブルが発生しても保証できません。
g) アンプ取付ベース
アンプはTAOC製一点支持型インシュレータ(3個)に乗せ、上部にTGメタルのウエイト(4個)を載せています。
アナログ及びCDプレーヤに使用したときは明らかに効果がわかりましたが、この場合はもう一つ良く分かりません。
害はなさそうなので、とりあえずそのままにしています。
3.音の変化
このアンプ購入まで、プリメインアンプはKENWOOD製「L-A1」を使っていました。昨年末に、電源コンデンサ/メーカー依頼、ACコード/(2(f)と同仕様)、出力抵抗(0.1Ω)/DALEプレート抵抗に交換したことによりかなり音質が改善されたため、個人的には満足していました。
ところがこのアンプの登場で活躍の場を失ってしまったため、「成人の日」に年始の挨拶に来た義理の弟に供与されてしまいました。
さて10年程前、中古レコードを一般人としては大量に買い集めたため、大半はほぼハズレとはいえ枚数はあります。その数少ないアタリの中から、「BOB JAMES / OBSESSION」のB面2曲目「RAIN」冒頭の雨と雷の音の変化を例にします。
組み合わせ
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音 色
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1.L-A1+5610K+DL-103R |
雨はパサパサと乾いており、雷も線香花火のような音。 |
2.7510K+5610K+DL-103R |
多少雨音らしくなり、雷もそれらしい雰囲気になるが力不足。 |
3.上記+巻線ATT |
解像度が上がり、音の腰が下がってくる。 |
4.上記+基板抵抗を一部DALE巻線に交換 |
さらに解像度が上がる。 |
5.カートリッジを「AT-ART2000」に変更 |
解像度はかなり上がるが、音色傾向はあまり変わらない。 |
6.上記+EQA-5610KのEQ部コンデンサ(以下EQC)交換 |
音色一変。力強くスピード感があり本物の音に近づく。(ポリプロピレン製/海神無線で購入) 特に遠鳴りの雷音が消えていくときの低音部分がやっと再現される。 |
7.上記+出力抵抗のみDALE巻線、その他は同金皮抵抗に交換 |
解像度が上がるとともに、低音が締まりスピード感も増す。 |
上記以外にも20枚ほど比較用にレコードを使用しました。音色変化は6.EQC交換後が一番大きかったですが、その結果として大雑把に以下の様に分けることができます。
- a. 解像度が上がるのに連動してさらに良くなっていくもの
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b. 最初のうちは良かったのに途中でもう一つかなと思わせるもの(一般的にはかなり良い)
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c. 最初はウルサイ曲だと思っていたのに録音が良いことがわかるもの
具体的に例を挙げると以下の様になります。
(a) に相当するのが、TBMレーベル邦人ジャズ録音盤、井上陽水ライブ/もどり道等
−井上陽水ライブは、A面冒頭のギター音が生々しくなり、またA面後半のMC部分にハムノイズが入っているのが聞こえるようになった。
(b) に相当するのが、中島みゆき/おかえりなさい、CARPENTERS, GOLDEN PRIZE等
−「暗い」と云われる中島みゆきの曲の中でも特筆に値する、A面2曲目「髪」という曲はEQC交換までは相当良く聞こえていた。
(c)に相当するのが、GLORIA ESTEFAN / LET IT LOOSE、マリーン/Be・Pop等
−マリーンのB面1曲目「PRIVATE JOY」は、正しく再生されると非常に良い録音だということがわかる好例である。
4.まとめ
1月1日午前2時過ぎから改造時以外は電源が入ったままになっており、エージング時間も最初からだと300時間程、最新の改造からでも50時間程となりました。
現在の音は、どちらかと言えば軽めの非常に解像度の高い音です。目の前で演奏しているという状態にかなり近づいたようで今は満足しています。
まだ、入力セレクターボックスの製作等も残っており、しばらく楽しめそうです。
5.その他
a) EQA-5610K
一番上の写真(右)を見ていただければお判りのように見る影もなくなってしまいました。
改造個所は以下の通りです。
a-1) 本体ケース
47研究所の信楽焼DACの記事に触発され、スポンジケーキ用ガラス容器に変更しました。フタの部分はガラス製の皿を載せています。
「L-A1」使用時に改造したのですが、音がのびやかになり音像定位が明確になったという印象がありました。
本体はTAOC製一点支持型インシュレータ(3個)に乗せ、上部にダンベル (1kg)を2個載せています。これは効果があるようです。
a-2) 電源
単一電池に変更しました。さらに基板の電源ラインにOSコン(470μF)を、+/-各々2本増設したため低域がしっかりしてきました。
a-3) 配線
アクロテック6N(24番)に全て変更しました。銀メッキ単線に比べると音は細身になりますが、当時は全体のバランスが良い印象がありました。
入出力にもこの線を使っているため、入力側ではハムノイズを拾いやすくなりますが、シールド線より音に開放感が感じられます。
ハムノイズ対策としては、5本の線を多少撚り合わせる程度でも普通に聞くには問題ないレベルまでノイズを低減させることができます。
a-4) 部品交換
基板上のフィルムコンデンサは、EQ用ポリプロピレン、DCサーボ部高音質型、抵抗はDALE金皮抵抗(出力用/100Ωのみ巻線)に交換しました。EQ用交換で「低域が張り出し力強くスピード感のある音質」に一変し、抵抗交換で低域の解像度が上がり締まった音になりました。
なお、OSコンの外皮は組み立て直後に外しました。やはり外した方が音がすっきりするようです。
b) ターンテーブル
b-1) シート
シートは現在使っていません。スピンドル部を中心に、ブラックメタル(制振金属)プレート4枚を「口」の字状に並べ、レコードを乗せた上からスタビライザー「AT-618(600g)/Audio Technica」+「円形鉛プレート(800g)/TGメタル」(計1.4Kg)で押さえ込んでいます。
制振金属の効果か、単なる慣性モーメントの増加か、これらの相乗作用なのか判明しませんが、シート使用時と違い鮮度の高い音が得られます。
鉛プレートを外すと腰高の音となり、プレートを3枚「△」にすると「鉛プレートなし」の方がバランス良く聞こえるようです。ターンテーブル自体の重量増と合わせると、スピンドル及びモーターに対し2kg以上の負担増になっています。
今のところ問題は出ていませんが、お勧めできる方法ではありませんのでご注意ください。
b-2) 電源部
トランス及びコンデンサを大型化し、整流ダイオードを大容量ショトキーバリア型に交換してあります。
腰が据わり明確な音になります。(当然メーカー保証は受けられなくなります。)
b-3) 防震対策
本体内部は、ブチルゴム及び鉛シートで防震加工してあります。余計な音が出なくなりました。
c) シェル&カートリッジ
当初カートリッジ(DL-103R)とシェル(AT-LH13/Audio Technica)の間に、ブラックメタルプレートを加工したものを挟んでいました。
「L-A1」で聞いているには、余計な音が無くなり全体に静かになるからです。ところが7510Kに変えてみると、何となく高域がすっきりしないように感じられたので外してみました。すると情報量が増える上に、音に生気が出て高域のヌケも良くなりました。
他のシステムでも再現性があるかどうかわかりませんが、音の情報が多すぎたためアンプ(L-A1)が処理しきれなくなり、いわゆる「ウルサイ」音となってしまっていたような気がします。
なお現役カートリッジは、AT-ART2000に替わりました。DL-103Rの2倍強の値段ですが、それだけのことは十分にあると感じています。聴き比べると、DL-103Rの音がラフに感じられます。
d) 消磁装置
永井社長のメールに出てくる、「オーディオ道場」で使っているものと多分同じ物を昨秋より使っています。
使用感はメーカーの宣伝通り、処理後CDや部品(AC/RCAプラグ等含む)の音が澄んできます。
SCA-7510K制作時もほとんどの部品は処理してから組み立てを行いました。
LP/LD用もあるようですが値段が高いので、試しにLPをジャケットに入れたまま片面4回(計8回)、全体を4等分するように処理してみました。専用機と比べ処理結果は悪いかもしれませんが、明らかにCD処理と同様の結果が得られました。20枚以上処理しましたが再現性があります。
なお、再生装置によっては「ハイ上がりで中ヌケ」の音に聞こえると思います。CDウォークマン等はその傾向が出ました。
これにも「エージング効果」のようなものがあるのか、現時点では不明です。
閑話休題
ウィスキーを処理すると口当たりがまろやかになります。醤油や酢でも同様の傾向になるように感じられます。但し、高周波磁界をかけているので素材が変質する可能性があります。試される方は自己責任でお願いします。
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e) オーディオラック
現在HAMILEXのラックを使っています。当たり前と言えばそれまでですが、合板製(21mm厚)から、このラックに変えただけで音のグレードが上がりました。1点支持型インシュレータもこのラックだと相性が良いようです。
使用システム
アナログプレーヤ
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Technics SP-20
電源回路改造、ブチルゴム&鉛プレートで内部&ターンテーブル妨震処理 |
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Technics EPA-100
内部コード/Ortofon 8Nコードに交換 |
カートリッジ
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DENON DL-103R (待機)
本体上部/0.5mm程度研磨しフラットに加工 |
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Audio Technica AT-ART2000 |
EQアンプ
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EQA-5610K
抵抗&フィルムコンデンサ交換、電源ラインにOSコン追加、電源/単一電池16本に変更 |
CDプレーヤ
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Technics SL-P1200
ブチルゴム&鉛プレートで内部妨震処理、出力/アクロテック6N(24番)直出し他改造 |
プリメインアンプ
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KENWOOD L-A1 (転出)
電源コード、電源コンデンサ、出力抵抗/DALEプレート抵抗に交換等 |
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SCA-7510K
DALE巻線抵抗ATT、一部抵抗DALE巻線抵抗に交換、フィルムコンデンサ交換 |
スピーカ
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長岡式D-55型バックロードホーン
Fostex FE-206S/フルレンジ、FT90H/ツイータ |
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YAMAHA YST-SW800 |
ヘッドホン
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SONY MDR-Z900 |
チューナー
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KENWOOD KT-7020 |
カセットデッキ
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PIONEER T-D7 |
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