SCA-7511(AS-23搭載モデル)試聴記
岡山のigurin様より
今回試聴お世話になりました。当方、基本的には衝動買いが多く、いままで何度も失敗してきました。今回このような試聴の機会をいただいて、ほんとに助かります。
背景および目的:私のaudio歴は今から20年前で一度止まっております。当時は、CDが登場して、第1次audioブーム、FM誌が書店をにぎわし、秋葉原といったらaudio
shopといった今では信じられない時代でした。
当時高校生で、ブラスバンドに参加していたためか、少しばかり音にこだわって父と相談して自宅システムを築きました。SpeakerはOnkyo
Monitor 2000、Amp はYamaha A-2000、CDPは同じくYamahaでしたが型番は忘れました。大学へ進学後はほどなく興味はべつのものに移り、また実家を離れる機会が多くなったため、ampのスイッチを入れることは減りました。昨年岡山へ引っ越したおり、父から「audio
setを持っていけ」と言われて、「こんな大きいものどうしようか」と思いながら連れて参りました。Speakerはエッジが寿命、広島のshopで交換していただき、それなりに良くなっていたのですが、一度バックロード・ホーンを試したいと欲が出まして、2005年暮れにハセヒロ・コンクリートスピーカを手に入れました。評判通り大変良いスピーカです。ですが、どうもフォルテが大きすぎて(うるさくて)、ピアニシモが小さい(細い)。これはアンプのせいかなあ?と考えました。時に右チャンネルから音が聞こえなくなったり…。やはり擬似A級とはいえ、150W/chの出力。発熱も多いため基盤やらいたんでしまったのか、とそろそろ買い換えを検討していました。こんな時にインターネットはとても役立ちます。バックロードをコンパクトなシステムで紹介しているよしじゅんさんのページを拝見いたしました。管球式からsatri
ampへの変遷はぐーっと来るところがあり、試聴屋さんへとりあえずampをお借りすることとしました。
方法:一週間の貸し出し期間、CDはお気に入りとお気に入りでないものをできるだけ混ぜて聴取する方法をとりました。当方、いままでRCAおよびスピーカケーブルに投資したことがないので、おすすめのRCAケーブルの実力も評価することにしました。試聴時間はCD一枚5分、ただしとても気に入った場合には評価者(私)の判断にゆだねることとしました。
試聴したCDは次の通りです。
交響曲:朝比奈 大阪フィル ドボルジャーク #7
協奏曲:マ、バレンボイム他、ブラームス ダブルコンチェルト
協奏曲:ツイマーマン、ラトル ブラームス ピアノコンチェルト #1
協奏曲:シュケナージ、ハインテインク ラフマニノフ ピアノコンチェルト #2
協奏曲:吉野、アーノンクール モーツアルト フルートとハープのコンチェルト
器楽曲:ごとうみどり、パガニーニ曲集
器楽曲:コリー、平均律クラビーア
器楽曲:藤森、コリー チェロ小品集
器楽曲:4本のチェロのための小品集 シャコンヌ
部屋は20畳のリビングダイニング。子供が走り回ったり、食卓の準備などの雑音が多い環境です。床は絨毯バリ。アースはとれない環境でした。スピーカはハセヒロ・コンクリートバックロード、スピーカーコードは20年前の銅線(詳細不明)、CDPは、marantz
5400です。
結果
SCA-7511は、ほとんどのCDにおいて良好な空間を提供してくれました。一方で、特定のCDでは、もともと録音状況が不良なためか、いままでの印象が崩れたものもありました。
良好な空間とは、フォルテがうるさくない。一方でピアニシモでも十分に聞き取ることが出来ることが基本です。つぎに各楽器の分離、さらにハーモニ、倍音の聴取などでしょうか。高域、中域、低域にわたってバランスよく聴取できることももちろん重要な要素です。今回選んだCDは、おおよそピアニシモで聴かせたい部分は中音域であることがおおく、この帯域では、SCA-7511は極めて良好な空間を提供していると思います(が科学的データとしては証明できていません)。
良好な空間を再現したCD:マ、バレンボイムのダブルコンチェルトは、ライブ録音のためか雑音が多く、音も荒かったため、迫力はあるけれど…。しかし、SCA-7511で再生すると、いままでA-2000のトーンコントロールをどのようにいじっても出てこなかった、管楽器の響きが浮き上がります。さらに独奏者の息吹?鼻歌?弦のこすれもわかります。決して録音状況はよいはずではないのに。また、ライブ録音盤を作成することを前提に、リハーサルとつぎはぎしたCDではないのに。録音エンジニアの技術、マイクの性能、ホールの状態などさまざまな要因が考えられますが、いずれにしてもSCA-7511は、ここまでベールを剥いでくれます。(わかった気にさせてくれます?)
マイスターミュージック製のCDは、高品位な録音でお気に入りが多いです。藤森&コリーは、もちろん録音に負けないくらいすばらしい演奏を聴かせてくれます。目をつぶると、左に藤森のチェロ、右少し奥?コリーのピアノがあることがわかります。3曲目には藤森の位置が変わった?客席でいうとすこし上から聴いている感じになりました。こんなことは初めてです。曲によってマイクの設定をかえているのでしょう(きっと)。
4本のチェロ 小品集はすでに5枚のCDが発売されています。どれも素晴らしい演奏ですが、シャコンヌはなかでも特筆でしょう。いままでは熱気はわかったのですが、同時に荒さ、音が割れる感じ?があり耳につきました。SCA-7511はほどよいバランスで良い空間を提供してくれました。
吉野、アーノンクールのモーツアルト フルートとハープのダブルコンチェルト(DELTEC盤)は、ハープが少し奥まった感じ?こんなに目立たないのかといつも違和感がありました。SCA-7511は、ハープの響きがぐっと近づき、弦を弾く音を明瞭に聴くことができます。A-2000では、「ライブ録音なのかなあ?作り物っぽいなあ」とおもいましたが、SCA-7511ではライブ感がはっきりします。
良好な空間を再現できなかったCD:アシュケナージのラフマニノフは、オーケストラとピアノが離れている?オーケストラが「ものすごく広くてエコーがかかっているホールで、独奏者と距離を置いて録音している」印象がありました。このCDはいろいろなシステムで聴いてみましたが、どうも現実感がない?いい音だろうけども、といったところで、再生が難しいものの一つでした。SCA-7511でこの雰囲気は変わるかなあ?もっとオーケストラと独奏の距離が縮まるか期待しました。結果は、「もっと距離が離れて、作り物のような感じ」が強くなりました。私の結論としては、これはデッカの録音条件によると考えています。SCA-7511で良い印象が得られなかった唯一のCDでした。
結論
SCA-7511は、とてもよい条件で録音されたCDに対して、極めて傑出した再生能力をもったアンプです。音楽に対する感動を与えてくれるだけでなく、録音された状況までも思いをはせる機会を与えてくれます。家内も気に入りました。
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