illusion
EQA-5620を聴く
杉並のS.M様より
ここのところステレオサウンド(147号)を見ると、三浦さんも菅野さんも最近、アナログを聴く機会が非常に多いとの話が出ている。三浦さんはアナログの音の深さに魅せられて、いろいろなことをすればするほど、より深い音楽の情報がひきだせるため面白くて仕方がないとのことであるし、菅野さんは、物理特性を極限まで高めたニュートラルな音のフォノアンプ、ボルダー2008を聴いたことがきっかけになって、アナログレコードばかり聴いていて、今や、病み付きであるとのことである。
かく言う小生も、実はillusionのフォノアンプ、EQA-5620を聴いて以来アナログレコードばかり聴いており、今やCD売場ではなく中古レコードのコーナーをうろうろする始末である。もう菅野さん同様、すっかり病み付きになってしまった。なにせCDで聴くより全然いい音なので、CDに手が出なくなってしまったのである。我ながらどうなったのかと思う。CDはphilips
1000で聴いていて、これはこれなりにいい音だと思っていたがEQA-5620でレコードを聴いた後では、高域の抜けが悪く硬い音に聴こえて、どうも音楽が楽しめない。レコードからこれだけいい音が聴けるということは、本当にショックであった。
今まで、何をしてきたのか、本当のアナログレコードの音を聴いていなかったのではないかと反省しきりである。
レコードの音の方がいいと主張する人がいることは知っていたが、自分自身の経験では、即ち、当時CDの方がそれまで聴いてきたレコードより随分といい音がすることから、CDが登場して程なく全面的に切替えてしまった。パチパチノイズからも開放されたし、ゆったりとした気分で音楽が聴けて、これまではそれで充分満足して来たのである。
それが、EQA-5620でアナログレコードを一聴するや、CDを聴くのが嫌になってしまったのだから。アナログレコード派からすれば、今頃なにを寝ぼけたことを言っているんだとおっしゃるだろうが、こればかりは体験しないとわからない。菅野さんはボルダーを聴いて病み付きになり、小生はイリュージョンを聴いてそうなったわけであるが、このくだりを読んで菅野さんところも三浦さんところもこれはどうもレコードの方がいい音がしているのではと思った次第である。
小生のシステムは以下の通りである。
LPプレーヤー |
Micro DDX1000 |
アーム |
Audio Craft AC-3000MC |
カートリッジ |
Ortofon MC20マークII |
CDプレーヤー |
philips LHH-1000 |
DAC |
philips LHH-1000 |
プリアンプ |
BP PRE-7610 |
パワーアンプ |
Citation XX |
スピーカー |
Apogee Diva |
その他 |
DynavectorスーパーステレオアンプによりSSSを実施。リスニングルームは12畳 |
illusion EQA-5620はいろいろパーツが選択できるが、小生のところに最終的に納まったものは、銅ケースモデルでV4.3+V5.1テフロン搭載モデルであり、フューズはSBF-1.6Aに電源ケーブルはハイエンドホースの自作ものに換えている。プリとの接続は、プリが電流電送の端子をもつSATRIアンプなので電圧電送ではなく電流電送にしている。
場所をとって困ってはいるものの、まだ思いの丈があって捨てきれずに残してあるLPを死蔵にしたくない、何とか聴けるようにしたい、特にCDでも今ひとつ満足できないフィシャーデスカウを何とかイメージ通りに再生したいと言うのが、EQA-5620試聴の最初の動機なのであるが、illusion
EQA-5620はこれらの手当てをしたことも加わってか、期待を大きく上回る十全のデスカウに仕上げてくれた。
このillusion EQA-5620は、菅野さんがお聴きになったボルダー2008の10数分の1の価格であるが、このフィシャーデスカウの何とも柔らかい魅力的な声を聴くと、この価格ながら音は十分比肩できるような気がする。もっとも聴き比べたわけではないので軽々しくいったら怒られるが。
音質は、フォノイコライザーというアンプを徹底的にハイグレード化したというか-----理詰めで詰めていった、その結果がこの音になった。まさしくこの通りのように感じる。筺体を銅板仕様にしたことはボルダーもやっていない。
まことに癖のないニュートラルな音で、音楽の魅力が鮮やかに描き出される。しなやかできめ細かい肌ざわりでありながら、強靭な芯があり、豊かな空間感のある音、なんだか随分とオーバーではないかと言われそうあるが、そう感じるのである。これは一体どうして、何によって、これだけ洗練された音になったのだろう。ハードのことはまるでわからない小生であるが敢えて推論すれば1つはテフロン仕様が効いているように思われる。これによりまろやかさ、しなやかさが醸成されているように感じる。V5.1をレジン仕様にするとこのまろやかさが薄れ、シャープで力強さ指向の音に変わる。
ポピュラー音楽はこちらの方がパンチがあっていいかもしれない。小生はフィシャーデスカウを聴きたいということから、オプションでこのテフロン仕様を選び、柔らかい音を求めたわけであるが、これで正解だったように思う。しかしこのテフロン仕様だけではまろやか過ぎる感じで、もう1つ力強さが足りないように感じる。ここでフューズをセラミック製のSBF-1.6Aに換えると、俄然生き生きとした力強さが出てきた。これもサブゼロ処理をしないものの方が好結果が得られた。不思議である。たかだかフューズ1個でこれだけ変わるのだから。
セラミックフューズは概ねどのアンプでも好結果になるようであるが、テフロン仕様にした場合は、絶対付属フューズをこれに換えることをお勧めしたい。1000円強でこれだけいい音になるのであるから、コストパフォーマンスからいったら抜群である。
電源ケーブルは付属しているが、特になんてことはない普通のものであるので、自分の好みにしたがって換えたらいい。小生はハイエンドホースの自作のものを使っているが、力強さはこれでも増しているように思われる。銅とアルミの違いであるが、聴き比べればわかる。文章表現力のない小生には、銅の方が音楽的としかいいようがない。電流電送と電圧電送の違いであるが、よく言われるように電流電送のほうが滑らかで美しいような気がする。いや、「ような気がする」ではなく、「滑らかで美しいと思った」である。
SATRIアンプのプリを持っていたら迷わず電流電送である。フォノアンプで気になるS/N、即ちノイズについてであるが、質のいいノイズと言える。ヴォリュームをあげてスピーカーに近寄って耳を澄ませば、軽いシャーというホワイトノイズは聴こえる。小生は古いオルトフォンMC20マークIIを使っていることから、アッチネーターをMC最大の0dBにしているが、気になることはない。
困ったことはないのかと言われれば、ある。CDを聴くのが楽しくなくなったことである。もともと死蔵になっていたLPを聴けるようにするのがスタートだったのであるが、良くなり過ぎて、今度はそれに耳が慣れるとCDの再生音に魅力がなくなって、こちらが死蔵になりそうなのである。アナログレコードが良くなったとは言え、今や部屋を占拠しているのはCDであるから、これがいい音に聴こえなくなったのでは、うーん、憂鬱になりますよね。
それからもう1つ。小生のシステムは、ダイナベクターのスーパーステレオアンプが入っており、これでSSSを楽しんでいるのであるが、illusion
EQA-5620でアナログ再生をするとこれが時として不要になってしまったのである。フィシャーデスカウのリートの時にダイナベクターをONにすると、なんだか透明な空間感がなくなり、見通しが悪くなって汚れたような感じになってしまう。調整が悪いのではといろいろやってみたが、外した方がいいのである。
シンフォニーのような大編成ものはONにした方がいいと思えるが、これまでのようにどんな曲でも入れっぱなしでは駄目である。曲によってはOFFにした方がいいということで、小まめに調整をしなければいけないという無精者にはややこしいことになってしまった。これだけillusion
EQA-5620の音場の再現性が高いと言うことなのだろう。
このillusion EQA-5620はまだ入れたばかりであるので、嬉しくなってこちらの精神状態も少しハイになって聴いているかもしれない。これからまだ印象が変わるかもしれないが、その時はまたレポートしたい。
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