AMP-5512試聴とDAコンバータ製作
moonbear様より
1. SATRIアンプとの出会い
SATRIアンプについてはホームページを見て知りました。SATRI回路の動作原理にとても興味を持ったのと、AMP-5511のちょっと見慣れない不思議なルックスを見てどうしても音を聴いてみたくなりました。早速、試聴屋さんにおじゃまして試聴させていただいたのですが、初めてAMP-5511の音を聞いたときは正直驚きました。とにかく自然で、アンプの存在を感じない、普通のアンプとは違う感じがしました。特に驚いたのは小音量時の音で、音量を絞っていっても音が曇ったりせず、澄んだ音のままであるというのはSATRIアンプの特徴ではないでしょうか。確か試聴させていただいたAMP-5511はDALE巻線アッテネータ搭載モデルだったかと思いまが、SATRIアンプの場合、ボリュームは音質を決定付ける重要なアイテムかと思います。AMP-5511とAMP-5512のどちらを購入するか迷ったのですが、ALL
OSコンでより音の透明度が高かったAMP-5512K(キット)+DALE巻線アッテネータを購入しました。自分で作った(キットですが)アンプから試聴屋さんで聴いたあのサウンドが出てくるかと思うと、作る楽しみと聴く楽しみで2倍楽しめますから。
実はAMP-5512を購入したのは7年前のことです。忙しくてなかなか試聴記を書けなかったのですが、AMP-5512とDAコンバータのメンテをきっかけに書かせていただきました。かなり古い話ですが、今日もAMP-5512はいい音楽を聴かせてくれています。
2. I/V変換回路にSATRI-ICを使用したDAコンバータの製作
SATRI-ICの動作原理、またその奏でる音に刺激され、SATRI-ICを使って何か自作できるものはないかと考えていた時、たまたま試聴屋さんからDAC-9710基板を安く譲っていただいたのをきっかけにDAコンバータの自作にチャレンジしました。DAC-9710で使用されていたデバイスが入手困難だったので、半分くらいは基板のパターンを無視(カット&ジャンパ)して回路を変更したのでオリジナルとはほとんど別物です。内部構成はブロック図を参照してください。
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DAC-9710基板
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DAC部拡大
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3電源とSATRI I/V部
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二階建式DAC(全体) |
Digital Audio ReceiverはCrystal社製のCS8412、DAC後段のローパスフィルタを軽くするため、8倍オーバサンプリングの日本プレシジョンサーキット社製デジタルフィルタSM5843Aを使用しています。Digital
Filterのクロック生成用として確か富士通製のバリメガV18M432を使用しています。DACデバイスにはバーブラウン社の18bit
DACであるPCM58を2個使用しています。
このシステムの目玉であるI/V変換回路には、SATRI-IC Ver4.1(BPM-7110T)を使用しています。SATRI-ICの出力負荷抵抗にはDALE巻線抵抗を使用し、ローパスフィルタ段はDALE巻線抵抗と銅箔スチコンを使用しました。SATRI-ICの負荷抵抗は音質を左右する重要な部品で、私の場合はやはりDALE巻線の透明感のある音が好きです。コンデンサも他のフィルムコン等を試しましたが、銅箔スチコンがもっとも色付けが少なく素直な音に感じました。この辺は好みの問題かと思います。
出力バッファは2SK117で、今のところ電圧出力のみです。時間がなくてなかなか手をつけられないのですが、将来的にはSATRI-LINK出力を付けたいと思っています。アナログ信号の配線には試聴屋さんよりサンプルとしてお裾分けしてもらったテフロン単線ケーブル(試聴屋さんありがとうございました)、デジタル系、電源系統には市販のテフロン被覆より線を使用しました。
電源はアナログ/デジタル独立式で、さらにデジタル電源はDigital Filterまでの5V系とDACデバイスの±15V系独立式です。電源トランスはTALEMAのトロイダルタイプです。ケースは2階建てで、1階がデジタル回路、2階がアナログ回路と電源回路というように一応デジタル/アナログ分離になっています。フロントパネル部がない見切り品のアルミシャーシ2個を積み重ね、フロントパネルとして2mm厚のアルミ板を取り付けました。色はスプレーラッカーで塗りました。フロントパネルにはLEDがあり、サンプリング周波数32kHz/44.1kHz/48kHz、MUTE、ディエンファシスON/OFF、同期状態等を表示します。
現状ではとりあえずDAコンバータとして動作し音が出るレベルといったところで、細かな修正、チューニングの余地がたくさんありそうです。デジタル回路パスコンのOSコン化やバリメガ電源の独立、配線の見直し等々。DAC-2000Kが欲しいところですが、自分でいろいろ試してみるのも勉強になります。
3. 試聴
ピアノ曲が好きでジョージ・ウィンストン、ビル・エヴァンス、フジコ・ヘミングなど聴いています。ジャンル的にはばらばらですが。
我が家のシステム
アンプ |
バクーンプロダクツ社製
AMP-5512K+DALE巻線アッテネータ |
スピーカー |
アコースティックラボ社製
ボレロ |
CDプレーヤー |
パイオニア社製 PD-T06 |
DAコンバータ |
自作 SATRI-IC
I/V変換回路搭載 |
ラインケーブル |
テフロン単線自作ツイストケーブル |
スピーカー
ケーブル |
モニター社製 コブラ シルバーライン2.5 |
試聴ディスク
・ジョージ・ウィンストン PLAINS, ALL THE SEASONS
OF GEORGE WINSTON
・平原綾香 From To
・PD-T06アナログ出力 → AMP-5512の場合
ピアノは瑞々しく余韻がきれいで、タッチが見えるような感じです。音量を上げてもうるさくならず、また音量を下げても余韻のきれいさが変わりません。ボーカルも自然で歌い手の存在を感じることができます。高音、低音の音質がどうだとか考える間もなく、ふわっと広がった音空間に包み込まれてしまいます。自作無帰還アンプもメーカ製アンプに比べるとストレートに音が出てる感じはしていたのですが、AMP-5512とは本質的な違いがあるようです。
・PD-T06デジタル出力 → 自作DAコンバータ
→ AMP-5512の場合
基本的な音質というのはほとんど変わらないのですが、空間表現に変化が見られます。こちらの方がより奥行き方向が深く、余韻の消え方が自然な感じがします。うまく表現できないのですが、余韻が消えた後がとても静かな感じがします。消えた後なので静かなのは当たり前ですが、音が出ている時も背景が静かになった感じです。聴き比べてみるとPD-T06のアナログ出力ではやや膨張感があるようで、ボーカルが前に張り出す感じがあります。ボーカルを聴くならそれはそれで良いかもしれませんが、ピアノの場合はもやもやした感じに聞こえてしまいます。
まあ、6万円クラスのCDプレーヤ出力との比較では何ともいえませんが、空間表現や透明感に違いが出るのは確かです。DACデバイスの電流出力をSATRI-ICによりI/V変換することで、音源の情報を色づけなく正確に取り出せているということなのでしょうか。アンプでも使用しているSATRI+DALE巻線の組み合わせによる特徴が、DAコンバータでも現れていると思います。
追記 SATRI-IC
V4.3へバージョンアップ
DAコンバータI/V変換回路部のSATRI-ICをV4.3に交換しました。DAコンバータに使用していたSATRI-IC
V4.1をAMP-5512Kの修理へ回してしまったので、DAC用にV4.3を購入しました。I/V変換回路のSATRI-IC部はいろいろ実験しようと思いソケットにしてあったので簡単に交換可能です。まだ、あまりエージングが進んでいませんが、試聴屋さんの解説にある通り、より透明感が増し音の分離が良くなった感じです。V4.3へのバージョンアップは予想以上に変化がありました。
以上
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